研究課題/領域番号 |
21K14027
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 琉球大学 (2022-2023) 筑波大学 (2021) |
研究代表者 |
磯和 幸延 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 特命助教 (70782572)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 腕足動物 / 化石タンパク質 / プロテオーム / ICP-1 / 殻体タンパク質 / ELISA / タテスジホウズキガイ |
研究開始時の研究の概要 |
骨や貝殻などの硬組織中に含まれるDNAやタンパク質は化石として保存され、その配列を決定することで過去の生物の遺伝情報を復元することができる。化石タンパク質の配列を決定する研究は主に脊椎動物で多く行われており、より豊富で、連続的に化石が産出する無脊椎動物を用いた研究例は少ない。本研究では、約100万年間にわたり、連続的に産出する腕足動物の化石からタンパク質を抽出し、そのアミノ酸配列を複数の年代において決定することを目的とする。その後、現生種から得られた殻体タンパク質のデータに化石タンパク質のデータを加えて、時間軸に沿って連続的に比較することにより、分子進化プロセスを直接的に議論することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は腕足動物の化石中に含まれる殻体タンパク質を抽出し、そのアミノ酸配列を決定し、比較することで、過去の遺伝情報を用いた分子進化プロセスの直接観的な観察を目指している。本年度は主に嘴殻亜門に属する腕足動物の1種であるタテスジホウズキガイ(Coptothyris grayi)の敦賀湾で採取された現生サンプルと約30万年前の房総半島の地層から採集された化石サンプルから殻体タンパク質を抽出して、解析を行った。それぞれの殻を乳鉢で粉砕してから、次亜塩素酸ナトリウムを用いて殻のコンタミネーションを除去した後、EDTAを用いて、殻を溶解し、タンパク質を抽出した。水溶性画分はフィルターを用いて、EDTAの除去と濃縮を行い、不溶性画分は8M urea, 2% tritonに溶解した。SDS-PAGE解析を行いCBB染色と銀染色を行ったところ、不溶性画分で不明瞭ではあったが、10kDa付近に殻体中に最も多く存在すると予測される殻体タンパク質であるICP-1と思われるもののバンドがみられた。一方で、化石サンプルではそのようなバンドはみられず、続成作用の影響により、アミノ酸配列の断片化が進行していることが示唆された。また、昨年度に引き続き、研究代表者が先行研究において作製したICP-1抗体を用いて、ELISA法により、化石中に殻体タンパク質のアミノ酸配列が分解されずに保存されているか検証する実験を行った。昨年度と比較すると改善が見られたものの、ネガティブコントロールの反応が引き続き強く検出されるため、化石中のICP-1の反応を正確に評価することはできておらず、今後、抗体濃度等の条件検討を引き続き行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は主にタテスジホウズキガイの現生サンプルについて、質量分析計を用いたプロテオーム解析を行い、殻体タンパク質の網羅的な同定を行い、17種の殻体タンパク質配列を同定することができた。また、昨年度はタテスジホウズキガイの化石サンプルにおける殻体タンパク質の保存の状況を確認するために、ICP-1抗体を用いたELISA法による解析を行った。本年度は、昨年度良い結果が得られなかった、ELISA法による解析を継続するとともに、SDS-PAGE解析を行い、化石サンプル中の続成作用の影響を評価する実験を継続した。現在のところ、化石中のタンパク質の存在を正確に評価するデータを得ることはできていないが、これらの実験は、化石中から得られたタンパク質の配列データの信頼性を検証するうえで重要な実験であり、今後も継続する予定である。また、本研究の目的を達成するためには、化石サンプルからアミノ酸配列の同定を行うことが不可欠であり、早急にデータの取得を目指す必要がある。腕足動物の殻からタンパク質を抽出する実験は、現在の研究環境において確立できており、来年度はこれらのサンプルをもとに受託解析サービスによるプロテオーム解析を行い、化石タンパク質の配列データの取得を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は現在までに抽出した化石タンパク質の質量分析計を用いたプロテオーム解析を行い、配列を決定することを目指す。そのために、必要なプロテオーム解析の受託サービスを選定し、解析を依頼する予定である。また、解析可能なサンプルであることを確認するために、抽出したタンパク質の濃度測定に必要な機器、試薬類を購入し実験環境を確立する。また、現在解析を行っているタテスジホウズキガイの他に、近縁種であるコカメガイ(Pictothyris picta)、カメホウズキチョウチン(Terebratalia coreanica)及びホウズキチョウチンガイ(Laqueus rubellus)の化石からもタンパク質を抽出し、解析を行う予定である。これらの化石サンプルはすでに採集済みであるが、必要に応じて房総半島において追加のサンプリングを行う。最終的に、得られた化石タンパク質のアミノ酸配列に、現生種の殻体タンパク質のデータを加え、時間軸に沿って連続的に比較することで、分子進化のプロセスを議論する。また、これらの実験を進めると同時に、今年度まで継続してきたICP-1抗体を用いたELISA法による化石サンプル中の殻体タンパク質の保存状態の評価も継続して行う。ウエスタンブロッティング解析も行い、先行研究において作製した抗体がICP-1と特異的に結合することも確認する予定である。
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