研究課題/領域番号 |
21K14033
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐藤 圭 金沢大学, GS教育系, 講師 (40780036)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 軟体動物 / 原鰓類 / 貝殻微細構造 / 貝殻基質タンパク質 / 真珠構造 / 均質構造 / トランスクリプトーム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
軟体動物は環境の変化に応じてSMP遺伝子発現パターンを能動的にコントロールし微細構造を柔軟に作り変えてる能力をもっており,この生態的効果が軟体動物の適応放散の重要な駆動力の一つであった可能性がある.二枚貝原鰓類を研究対象とし,(1)分子生物実験により,微細構造形質が異なる現生原鰓類3系統それぞれについて微細構造形成を制御する貝殻タンパクを特定し,系統間の相同性の評価を行った上で,(2)飼育実験によって,低水温ストレスに応じて貝殻タンパク発現パターンと発現する微細構造形質が変化することを確かめ,(3)生息水深と微細構造の変化についての化石データを参照することで,この仮説の検証に取り組む.
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研究実績の概要 |
大槌湾・船越湾での継続的な調査により、当初目的としていた、それぞれ貝殻微細構造が異なる原鰓類の3系統のサンプリングが達成できた。目的種のRNA-seq解析、De novo アセンブリによる新規ゲノム配列の決定が完了している。またlocalBLASTによって既知の貝殻タンパク質の探索した結果、原始的二枚貝類の一群である原鰓類の貝殻形成の分子機構が極めて独自性の高いものである可能性が明らかとなりつつある。貝殻微細構造を制御すると考えられている貝殻基質タンパク質の研究は、これまでは主にモデル種を対象とした限定的な知見に基づく議論が続いていたが、本研究の成果によって、軟体動物の重要な形質である貝殻について、体系的な進化仮説が提唱できると期待される。 また、継続的な野外調査によって、産出年代が異なる(中生代~新生代)多数の化石原鰓類標本を入手できている。これらのサンプルについては、走査型電子顕微鏡による貝殻微細構造形質の観察が実施済みである。前述の進化仮説と総合することで、原鰓類における貝殻微細構造形質進化が適応放散に寄与したことを実証できれば、巨視的形態には現れないミクロスケールの形質進化の重要性が提言できるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
かつて調査地である大槌湾・船越湾において多産すると報告されていた対象種の1種が恐らく震災の影響でほとんど採取できず、タクソンサンプリングのための調査に時間を要していたため、全体としての進捗は遅れている。ただし、この最大の課題を令和6年度はクリアできた。このため、一連の研究成果をまとめ上げるためのデータは概ね揃いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
原鰓類の解析結果は、最終的にトランスクリプトーム解析とプロテオーム解析の結果を組み合わせることで、軟体動物という分類群を特徴づける貝殻の進化史に迫ることを目指す。プロテオーム解析は、タンパク質の抽出実験まで作業が進展しているため、まずはこの点について成果を投稿論文にまとめ上げることを目指す。また、これを踏まえて化石原鰓類の貝殻微細構造の進化についての研究成果をまとめ上げることを目標とする。この他、微細構造形質の可塑的発現についてのデータを得るため、次年度も継続して大槌湾での調査を実施する。
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