研究課題/領域番号 |
21K14047
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
大島 草太 東京都立大学, システムデザイン研究科, 助教 (90885112)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 炭素繊維強化複合材料 / 微視的損傷 / その場観察 / 破壊メカニズム 3.研究課題名 / 破壊メカニズム / 炭素繊維複合材料 / トランスバースクラック |
研究開始時の研究の概要 |
炭素繊維複合材料の積層板における最も初期の破壊モードであるトランスバースクラックは、微視的欠陥を起点に生じることが多く、発生箇所の予測が難しい。このため、その発生・進展プロセスの実験的評価は困難とされてきた。本研究では、超微細な人工欠陥を炭素繊維複合材料中に導入し、その場観察を行うことで、繰返し荷重下におけるトランスバースクラックの発生・進展のメカニズムを実験的に解明する。さらに、有限要素法を用いた微視的損傷進展解析を行うことで、トランスバースクラック発生・進展の予測手法を確立する。これにより、積層板の疲労寿命を正確に予測できるようになり、複合材料構造の信頼性向上に貢献する。
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研究実績の概要 |
本研究ではCFRP(炭素繊維強化プラスチック)積層板に超微細な人工欠陥を導入し、CFRPの特に初期の破壊とされるトランスバースクラック(繊維と直交する方向に進展する亀裂)の発生・進展メカニズムの解明を目標としている。 2022年度までは人工欠陥を導入したCFRP積層板を作製し、静的荷重下ならびに疲労荷重下におけるその場観察試験を行った。CFRPの成形時に直径2.5~50μmのタングステンワイヤと直径20μmのPTFEファイバを1本、荷重と繊維方向が直交する層に繊維と平行に埋め込み、人工欠陥を導入したCFRP積層板を成形した。 疲労荷重下でのその場観察試験を行うために、試験機の荷重波形と同期して顕微鏡のシャッターを切る機構を開発した。開発した機構は試験機と同期して撮影が可能であるため、各サイクルにおける最大荷重時に高倍率の顕微鏡画像を取得可能な機構である。これにより、疲労荷重下の場合でも繊維と樹脂が識別可能なスケールにおいて連続的に損傷挙動が観察可能であることを確認した。 疲労荷重下では最大応力の減少に伴い亀裂進展までのサイクル数が増加すること、繊維と樹脂のはく離は低いサイクル数で発生するが、進展まではある程度のサイクル数を要することなどが明らかになった。また、欠陥を起点としたものに加えて、各層の界面から進展する亀裂も確認されたため、これらの相互作用についても検討が必要なことが示唆された。 2023年度には引き続き疲労荷重下でのトランスバースクラック発生・進展の挙動評価を行うとともに、数値解析手法の検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の当初計画は、超微細人工欠陥を導入したCFRP積層板における欠陥周辺の損傷進展を疲労荷重下で観察することとしていた。 2022年度の研究実績では数ミクロンオーダーの微視的損傷進展を繰返し荷重下で逐次観察するための光学観測系を構築し、本研究で対象としている欠陥を起点とした微視的損傷進展観察が行えることを実証した。 その結果、繰返し荷重下における損傷メカニズム解明のために必要となる実験データの取得に成功した。これにより、当初の目標を達成できたことから、おおむね順調に進展しているものと自己評価した。 一方、疲労試験によって得られる実験データは膨大となり、疲労試験自体にも時間を要するため、効率的な試験やデータ整理方法については次年度以降も引き続き検討する必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には取得した実験データを用いて損傷進展メカニズムを数値的に解明する。これまで蓄積してきた実験データに基づいて、最適な損傷モデルの検討を行うとともに、欠陥寸法や疲労繰返し数が微視的欠陥を起点としたトランスバースクラックの進展挙動に及ぼす影響を明らかにする。また、前述の通り疲労試験は時間を要する試験であるため、十分なデータ数取得のために引き続き観察試験も並行して行うとともに、効率的なデータ整理方法についても検討を行う。
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