研究課題/領域番号 |
21K14068
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分18040:機械要素およびトライボロジー関連
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研究機関 | 東京大学 (2022-2023) 東京理科大学 (2021) |
研究代表者 |
岡部 貴雄 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (80649400)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 超高真空 / イオン液体 / 流体軸受 / 半導体製造装置 / 冷却 / アウトガス |
研究開始時の研究の概要 |
近年,パソコンやスマートフォン等で扱われるデータはサイズ・量共に増加の一途であり,これを保存・処理するフラッシュメモリやCPUといった半導体製品の回路をより微細で高密度に製造する必要があるが,その微細化の過程で障害となってくるものが空気である. したがって半導体製品を真空中で製造する必要が生じ,製造装置に使われる機構にはナノレベルの運動精度とともに,超高真空環境下でもガスを発生せずに駆動できる真空対応性の両立が求められるようになってきている.この研究は,この機構を超高真空内に導入するための新たな設計指針の確立と,機構そのものから発生する気体分子を極力減らす方法を確立するための研究である.
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研究実績の概要 |
近年の半導体製造装置には,クリーンで酸化を防げる高真空の利用の需要とクリーンルーム利用効率の向上のために小型化が求められている.令和5年度には,これを実現するための半導体製造装置向けの機構として,イオン液体を用いた流体軸受および,液体冷却機構の研究を行った. 流体軸受の研究では,新規回転機構の真空対応性能とアウトガス特性を調査した.この結果,直径70 mm以上の流体軸受は10^-5 Pa台に到達可能なことが明らかとなり,アウトガスも,半導体製造に支障のないレベルであることが確認された.今後は,試作製造装置デバイスを見据え, スケールアップした機構の研究を行う予定である. 液体冷却機構の研究では,これまでに得られた知見や設計指針を応用して,半導体製造プロセス中のウエハ発熱の冷却を目的とした真空対応冷却機構を開発した.この機構は,イオン液体を用いてSiウエハ裏面を循環液体で液浸冷却することができる.流体軸受を応用し,Siウエハは,この液体の圧力で浮上して支持されている.実験では,高真空中で模擬的に一部を300 ℃に加熱したウエハを,ウエハ面内40 mm以内の距離で200 ℃低下させることができることが示され,真空環境においても大気中と同様に液体冷却装置や熱交換器を構成可能なことを示した.真空対応性においても,これまでの研究の真空用流体軸受と同様,高真空対応性が確認された.また,ウエハの温度分布をシミュレーションした結果,その設計の有用性が確認された.真空対応液体冷却機構は,半導体製造のみならず,多くの分野での応用が期待できるものである.これらの研究から得られた知見は,半導体製造装置の発展に有意義なものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に推移している. 当初は直動機構で流体軸受の評価を行う予定であったが,半導体業界の需要の高まりから,直動機構の一部部品の入手が遅れたため,回転機構を使用した評価を行った.このため,進捗をおおむね順調な推移とした. 回転機構の研究においては順調に成果が得られており半導体製造デバイスの試作を視野に入れた実験機の製作に着手することができた.直動機構は,次年度へ延長して評価する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,実用の半導体製造デバイスを見据えた真空用機構の研究を行っていく.これまでの研究では,基本的な真空性能の評価に留まっており,軸受も小型のものであったが,今後の課題として,スケールアップをした場合の評価や技術的問題点を明らかにすることである.現状では,本助成で得た知見を用いて設計した直径300 mmの流体軸受回転機構の試作が完了しており,この機構を用いてスケールアップの課題の調査を行う予定である.また,メーカーとの共同研究も進めていく予定である.
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