研究課題/領域番号 |
21K14112
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
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研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中野 壽彦 大分工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (50748986)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 懸垂物体 / 制振 / バイアスモーメンタム方式 / モーメンタムホイール / リアクションホイール / コントロールモーメントジャイロ |
研究開始時の研究の概要 |
ロープやワイヤーで懸垂された物体を扱うシステムでは制振が必要となる場合が多いが,ねじれ振動と揺れ振動が同時に生じる多自由度懸垂物体の制振は研究事例が僅少である.本研究はモーメンタムホイールでバイアス角運動量を付加しより少ない制御入力でねじれ振動と揺れ振動を減衰させる,バイアスモーメンタム方式の制振手法を提案する.本手法は装置の小型化・簡易化・耐故障性向上が可能であり,成層圏気球や小型飛翔体吊り荷の高効率制振を可能とする.本研究では運動モデルの導出・制御系設計を行い,数値解析と実機実験によって本手法の有効性を世界で初めて実証する.また極力,搭載機器を小型・軽量化するための最適設計条件を解明する.
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研究実績の概要 |
ロープやワイヤーで懸垂された吊り荷を扱う機械システムでは制振が要求される場合が多く,様々な手法が研究されている.しかしねじれ振動と揺れ振動が同時に生じる多自由度懸垂物体の制振に関する研究は僅少である.本研究ではモーメンタムホイールでバイアス角運動量を付加し,そのジャイロ効果を利用してより少ない制御入力でねじれ振動と揺れ振動を同時に減衰させる,バイアスモーメンタム方式に基づく制振手法を提案する.本手法は装置の小型化・簡易化・耐故障性向上の面で優れ,成層圏気球や小型飛翔体吊り荷の高効率・高精度な制振を可能とする.本研究では二通りのアクチュエータ構成を想定し,ダイナミクスの定式化と制御系設計を行い,本手法で多自由度懸垂物体の制振が可能であることを実証する.また懸垂物体パラメータと制振装置仕様が制振性能へ及ぼす影響を分析し,搭載機器の小型・軽量化のための最適設計条件を解明すること目指す. 令和5年度は主として①運動モデルと用いた制振性能の解析,②可変速CMGのモデルを組み込んだ数値解析による制振性能の分析,③実験装置による懸垂系挙動の評価と装置の微調整,の点について研究を進めた.理論解析によって,制振性能がバイアス角運動量で決まり,その際の制御ゲインの最適値はバイアス角運動量の値から一意に決まることを明らかにした.CMGの挙動も含めた数値シミュレーションで制振性能を評価した.また実験によって,想定通り,バイアス角運動量によって振り子の振動面の切り替わりを生じさせることができることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①制御系パラメータと制振性能に関する理論解析:昨年度導出した線形近似モデルを用いた理論解析を進めた.無次元化を行うことで,振動方程式から固有値を解析的に導出する手順を明らかにした.固有値の解を用いて,ダンピング制御を行う場合における制御パラメータ(バイアス角運動量,制御ゲイン値)と制振特性との関連を調べた.その結果,制振性能はバイアス角運動量の値で決まること,その場合の制御ゲインの最適値はバイアス角運動量の値から一意に定まるということを示した. ②数値シミュレーションによる解析:昨年度までに準備した厳密な運動モデルに基づくシミュレーションモデルを改良した.可変速CMGのモデルを組みこんで,CMG自体の挙動も再現できるようにした.線形近似モデルと厳密モデルの双方で,複数の条件でシミュレーションを行い比較と解析を行った.その結果,近似モデルでは①で示された理論解析の結果と一致する結果が得られることを確認した.一方,厳密モデルでは,CMGのモデルを組み込んだことから,近似モデルとは一部異なる結果が生じることを確認した. ③実験装置の開発と動作確認:昨年度までに開発した実験装置を使い,バイアス角運動量を付された状態での自由振動(制振なし)の挙動を測定した.想定通り,ジャイロ効果によって振動面の切り替わりが生じることを確認できた一方,シミュレーションでは見られない不規則な挙動が生じることも確認した.姿勢検出を行うIMUセンサの再選定,懸垂方法の変更など試行錯誤を行い,ある程度シミュレーションの挙動に近づけることができた.一方で当初予定していた制振実験の実施までには至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
理論構築と数値シミュレーション解析は,ある程度成果が得られている.実機実験に関しては,これまでの開発で実験装置がおおよそ完成したが,まだ制振実験の実施には至っていない.そのため補助期間を1年間延長し,実機での実証評価を行う.またこれまで得られた成果を整理して論文化を目指す.
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