研究課題/領域番号 |
21K14125
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分20020:ロボティクスおよび知能機械システム関連
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
山野井 佑介 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 特任助教 (40870184)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 筋電義手 / 運動機能解析 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒト型ロボットハンドにおいて多自由度の制御入力が行えるインタフェース開発は大きな課題である.ウェアラブルロボットは他の運動を阻害しない意図抽出法が求められ,その点で人が筋を収縮させた際に発する筋電位は有用な制御入力であると考えられている.筋電位からは多くの動作意図が抽出できる一方で,不安定な生体信号であり,長期安定的に巧緻な意図抽出を行うことが現状難しい. そこで筋シナジーと最新の機械学習手法に着目し,手指運動モデルを獲得し人の手のような自然で巧緻なロボットハンドの制御を目指す.
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研究実績の概要 |
人の手は20関節24自由度あると言われており,汎用性高く巧緻な作業を行うのに適している.筋電義手や人工拡張肢など,近年,人の手を模したウェアラブルロボットが急速に進歩しているが,未だ健常の手とは比し難く機能が制限されている.このような試みにおいて複雑な機構の再現も然ることながら,生体信号からの多自由度の制御法の確立が大きな課題となっている.そこで本研究では多くの動作意図を抽出可能で他の運動を阻害しにくい筋電位を対象として,筋シナジー仮説に着目し,人の手の運動機能解析と多自由度ロボットハンドでの手指運動の連続制御を目指す. 本研究を行うにあたり,以下の4つの小目標を定めた.a)筋活動と手指運動の同時計測による筋シナジーの解明,b)基底となる筋シナジーを用いた義手制御モデルの機械学習的獲得,c)健常者と切断者の筋活動の相関解析,d)実機・シミュレーションでのオンライン評価.1年目にあたる令和3年度では,大規模なネットワークであることからハイパーパラメータの設定に苦労し,筋活動と関節角度の対応関係の解析に遅れが生じていたが,2年目にあたる令和4年度では,GANにより筋電位を入力として関節角度を出力する推定器の学習に成功した. これにより,前年度の成果と組み合わせて筋電位を入力として5指駆動型筋電義手を制御することができている.構築した手指角度推定器の対象動作数の向上や被験者数の増加によってモデルの改良を続けつつ,並行して獲得したモデルを用いて筋活動と手指運動の筋シナジーの解析を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GANはDeep Learningの一種であり,ハイパーパラメータは扱う入出力によって異なるため,経験的に決めなくてはならない.また,一度の学習に時間が掛かるため,試行錯誤的にパラメータを決定することに,当初の想定以上に時間が掛かっている.一旦,対象とする動作を限定し,モデルを簡略化することにより,五指の屈伸動作を識別することに成功しており,この成果は国際会議にて発表された.今後,対象動作数や被験者数の向上によってモデルの改善を目指す.また,このモデルを用いて指の関節運動から筋活動を推定するデコーダの構築に取り組んでおり,基底となる筋シナジーの機械学習的獲得が行えると考えている. 令和3年度に開発を行った5指指駆動型筋電義手は厚生労働省の補装具完成用部品に申請し,令和4年4月に登録に至った.国産筋電義手としては平成30年4月に登録された我々の研究グループのものに続き2例目である.これに関して本年は多くのメディアの取材や展示会等への出展を行っており,高い注目を集めている. また,令和4年度は筋電義手に関する研究として,英文学術雑誌 1件,和文学術雑誌 1件,国際学会 2件,国内学会 1件の研究成果発表を行った.また,国際学会 1件に関しては,Best Paper Finalist Awardを受賞し,関連学術雑誌への招待を受けており,近日中に投稿予定である.また,数件の英文学術雑誌への投稿を進行している.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度にGANによる,筋電位を入力とした手指関節角度推定器の基礎を構築する予定であったが,ハイパーパラメータの決定に想定以上に時間が掛かってしまった.そこで,一旦,対象動作を限定しモデルを簡略化する方針を立てていたが,その結果,五指の運動を推定することに成功した.今後は対象動作や被験者数を増加させ,モデルの改善を図るが,ハイパーパラメータを経験的に決定する上で,一度モデルの獲得に成功しているため,そこから拡張していくことは,全く未知の状態から探索することと比べ,探索範囲の検討がつけやすいため,今後研究が加速すると考えている. また,獲得したモデルを用いて関節運動から筋活動を逆に推定するデコーダの構築に取り組んでおり,これによって規定となる筋シナジーの機械学習的獲得が行えると考えている.機械的な指の連動や解剖学的な協調運動と比較することで,ヒトの運動メカニズムの解明にもつながると考えている. 令和5年度は上肢切断者での実験も計画しているが,健常者と比較して時間を要するため,上肢切断者での臨床応用の比重を下げて,より多くのデータを計測し健常者で理論の基礎を固めることを優先したいと考えている. また,実機に関しては筋電位を用いて五指駆動型義手を制御することに成功しているため,基礎検証を行っていきたいと考えている.
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