研究課題/領域番号 |
21K14147
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
小林 靖之 帝京大学, 理工学部, 准教授 (00604513)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 太陽光発電システム / 太陽電池 / 発電中検査 / 並列抵抗成分 / セル電圧揺らぎ / 変調光照射法 / 太陽電池セル / セル並列抵抗成分 / 発電中セル電圧揺らぎ |
研究開始時の研究の概要 |
太陽電池モジュールの既存検査方法の多く(I-V曲線測定,エレクトロルミネッセンス観察など)は、発電中モジュール内の太陽電池セル個々のセル電圧等を直接推定できない。そこで発電中モジュール内のセル動作電圧の非接触推定方法(変調光照射法)が提案されたが、セル並列抵抗成分や自然太陽光下のセル電圧の変動の影響でまだ実用化できていない。 本研究では、変調光照射法による発電中モジュール内のセル並列抵抗成分の推定や自然太陽光下のセル電圧の変動の挙動解明を進め、変調光照射法による各セルの電圧測定と既存検査手法の融合によるモジュールの劣化基準を提案し、非接触で発電中モジュールの高度な検査を実現する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は①研究代表者の開発した変調光照射法を拡張して発電中太陽電池モジュール内の太陽電池セル個々の並列抵抗成分の非接触推定を実現すること、②自然太陽光下のモジュール内セル動作電圧について、観測地点上空の大気揺らぎに由来する太陽電池セルの電圧揺らぎと気象現象との相関や揺らぎを含む電圧の適正条件を把握すること、③変調光照射法によるモジュール内各セルの状態推定(セル並列抵抗成分や揺らぎを含む動作電圧)と既存手法(EL法やサーモグラフィ検査)を融合したモジュールの劣化基準を提案することである。 令和5年度の研究実績では、上記①②のため、変調光照射法による発電中モジュール内のセル電圧のリアルタイム測定について太陽電池の国際会議PVSEC-33における発表成果を発展して、測定条件を網羅的に検討した結果、真のセル電圧の時間波形に一層忠実に相関をもつロックインアンプ出力を得られる測定条件を見出し、電気学会の英語論文誌に"A Real-time, Noncontact Method for Estimating the Voltage of a Single Cell in Series-Connected Photovoltaic Cells"として令和5年9月に掲載された。さらに、モジュール出力に直列コイルを挿入せずにモジュール出力の単線にセンサをクランプするだけで発電中モジュール内のセル電圧の平均値を測定可能とする方法を見出し、令和5年 電気学会 電力・エネルギー部門大会において「[P42] 単線クランプによる太陽電池モジュール内セル電圧非接触推定」として発表した。 さらに②について自然太陽光の強度揺らぎの測定システムを改良し、太陽電池モジュール内のセル個々の動作電圧と短絡に近い動作電流の同時測定を実現した。これより両電圧と電流の相関について確率モデルによる説明を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①変調光照射法を拡張し発電中太陽電池モジュール内の太陽電池セル個々の並列抵抗成分の非接触推定を実現すること、②自然太陽光下のモジュール内セル動作電圧揺らぎと気象現象との相関を把握することの前提として不可欠な測定対象セル電圧のリアルタイム測定を実現する最適条件探索やプリアンプ(雑音除去フィルタ・増幅回路)の開発が順調に進み、さらに自然太陽光の強度揺らぎによる太陽電池モジュール内のセル個々の動作電圧と短絡に近い動作電流の同時測定を実現したため、現時点の測定機器の大幅な能力不足による懸念はない。 上記①②のためモジュール内セル電圧のリアルタイム測定技術について太陽電池の国際会議PVSEC-33の発表内容を発展して投稿し、電気学会の英語論文誌にて掲載された。さらに左記技術で必要なモジュール出力への直列コイルの挿入を必要としない単線へのセンサクランプによるモジュール内セル電圧の平均値の測定技術を開発し令和5年電気学会電力・エネルギー部門大会にて発表した。①②の改善すべき点(単線へのセンサクランプにより起こる感度低下と雑音増加を解消する技術開発)の研究のため、1年延長を希望した。 ②の自然太陽光の強度揺らぎについて強度揺らぎの測定システムを改良し、太陽電池モジュール内のセル個々の動作電圧と短絡に近い動作電流の同時測定を実現した。短絡に近い動作電流は自然太陽光の強度に比例するので短絡に近い動作電流揺らぎは概ね正規分布で表せること、セル個々の動作電圧は外れ値でなく平均値に近いものは正規分布で表せることが分かった。そこで、両者を正規分布モデルで表すことで、個々のセル電圧の関係を体系的に説明したいと考えている。しかし、現時点で未確立の確率モデルを具体的に提案し公表したいため、1年延長を希望した。 以上を総合的に評価しておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
①変調光照射法を拡張し発電中太陽電池モジュール内の太陽電池セル個々の並列抵抗成分の非接触推定を実現すること、②自然太陽光下のモジュール内セル動作電圧揺らぎと気象現象との相関を把握することの前提として、 上記①②のため測定対象セル電圧のリアルタイム測定の実現に向けて改善すべき点(単線へのセンサクランプにより起こる感度低下と雑音増加を解消する技術開発)として、デジタルロックインアンプに対する最適な設定条件と測定回路中の雑音除去フィルタの高性能化の実現、さらに実用化のためにモジュール出力へ直列コイルを挿入せずに単線クランプで測定可能とする低ノイズの電流クランプセンサを開発する必要がある。以上を実現した上で上記①②の実用化へ本格的に取り組む予定である。 ②の自然太陽光の強度揺らぎ測定には、太陽電池セルを用いた自然太陽光の強度揺らぎ測定装置を改良して太陽電池モジュール内のセル個々の動作電圧と短絡に近い動作電流の同時測定を開発したが、さらに、個々のセル電圧の関係を体系的に説明できる確率モデルを考案し、測定結果と比較して確率モデルの改良を進める必要がある。 以上①②を実現した上で、③変調光照射法によるモジュール内各セルの状態推定と既存手法を融合する研究に取り組んでいく。そのためには今までの屋内実験ではなく屋外で特に野外の太陽光発電設備で使用可能な測定設備の準備が必要である。そこで、十分な容量のポータブル電源を用意し、交流100V電源の設置されていない野外でも本研究の測定実験を行なう予定である。
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