研究課題
若手研究
ゼロ抵抗で大電流を流せる超伝導線材は省エネルギー社会の実現に欠かせない基盤技術の一つであり、超伝導線材に流せる最大電流(臨界電流)の向上は重要課題の一つである。本研究では、臨界電流の向上に有効な「人為的不純物(人工ピン)導入」と「縦磁界効果」に主眼を置く。銅酸化物高温超伝導線材に還元アニールを施して意図的に酸素欠損を導入し、超伝導特性を系統的に変化させた上で、超伝導線材に導入された人工ピンが縦磁界効果を始めとする各種通電特性に及ぼす影響を明らかにする。その結果を元に、人工ピン導入戦略の立案を試みる。
市販REBCO線材に酸素欠損を導入し、広範な温度・磁場・角度条件下のJc測定を通じて、酸素欠損がもたらす磁束ピン止めへの影響解明を試みた。その結果、酸素欠損導入により、臨界温度・キャリア密度は減少し、面内コヒーレンス長は大きく、面間コヒーレンス長ξcは小さくなる傾向を観測した。また、縦磁場Jcと面内横磁場Jcが互いに近づく挙動を観測したが、ξcの減少で固有ピンが効果的となったためと考えられる。更に、Bi2223線材・K-Ba122線材のJc特性を評価し、磁束ピン止めに対する印加ひずみ、粒界・球状ピンの影響の定量的記述に成功した。
超伝導線材における縦磁界効果は臨界電流を飛躍的に向上する手段として注目されているが、縦磁界臨界電流に対する人工ピン・酸素欠損の影響は明らかになっていなかった。本研究にて酸素欠損導入による超伝導特性の変化を明らかにした結果、人工ピンの導入や面間コヒーレンス長の縮小などを通じて面内横磁場に対する臨界電流値を向上させることで、超伝導線材の特性を向上できることが示唆された。また、Bi2223線材・K-Ba122線材の臨界電流に対するひずみや粒界・球状ピンの影響を定量記述を実現したことで、マグネット等の設計が容易になる。本研究で得た成果を踏まえた線材設計の最適化により、超伝導線材の特性向上が期待される。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 12件、 招待講演 2件)
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