研究課題/領域番号 |
21K14232
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分22020:構造工学および地震工学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野口 恭平 京都大学, 工学研究科, 助教 (70802685)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 飛来塩分 / 付着塩分 / 維持管理 / 数値流体解析 / 風洞実験 / 剥離剪断層 / 表面圧力 / 変動圧力 / 腐食 / CFD / 付着率 |
研究開始時の研究の概要 |
橋梁の維持管理の効率化に向けて,腐食環境の把握に関する研究が数多くなされてきたが,「なぜ」橋梁のその部位にそれだけの量の塩分が付着するのかという根本的な問題はあまり検討されていない.本研究では,塩分が橋梁表面への付着に至る過程という,維持管理の上では無視されやすい部分にあえて着目することで,物理的な根拠に立脚した付着塩分量の評価と維持管理手法の提案に取り組む.将来的な最終目標は,橋梁の形状や周辺環境を類型化しておくことで,任意の橋梁について付着塩分量の定量的な評価や最適な腐食環境の改善方法を提案できるようにすることである.
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研究実績の概要 |
矩形断面周りの塩分粒子の輸送過程について,2021年度は断面辺長比の異なる複数の矩形断面を対象に一連の検討を行い,粒子の輸送と付着に対しては剥離剪断層の周期的な運動が重要であり,渦放出1周期の中で生じる剥離剪断層の壁面への接近および離脱に応じて付着しやすい部位が変化することが明らかとなった.また,矩形断面の表面圧力に関係する物理量に基づいて,付着量を良好に予測できる可能性を示した.2022年度は前年度に得られた知見が複雑な形状にも適用できるのかを検討するため,凸型の断面(断面辺長比が6という流下方向に細長い矩形断面の上面中央に,同じ高さの正方形断面を設置したもの)を対象に一連の考察を試みた.まず,数値流体解析によって凸型断面周りの時間平均流れ場を算出し,かつ解析の妥当性を検証するため,風洞を利用した流れの可視化実験によって得られる風速分布と比較した.次に,矩形断面と同様に,得られた流れ場を利用して凸型断面周りの粒子飛散挙動と付着量の評価を試みた.この時,壁面への粒子付着の有無や多寡に対して,粒子の初期配置が想像以上に敏感であることが明らかとなった.具体的には,物体高さの100分の1の間隔で粒子を初期配置していたが,特に物体の上流面に対しては,さらに小さな間隔で配置しなければ付着しないことが判明した.この理由としては,物体が凸型の形状を有するため,物体に接近する流れは全体的に上向きとなり,壁面方向の粒子の慣性が相対的に小さくなることで,壁面への付着に至る粒子の初期配置は極めて限られるためと考えられる.本件は物理的な現象ではなく数値計算の条件設定にかかる問題であるので,今後十分に検討を行う必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は大学のスーパーコンピュータの更新年度であり,当初予定では10月から新システムが稼働する予定であったが,世界的な半導体不足の影響により,実質的な稼働開始は2023年度まで持ち越された.そのため,スーパーコンピュータが利用できない期間が半年以上続き,研究の遂行に対しても大きな影響があった.2023年度に入り,資源量は限られているもののスーパーコンピュータは稼働を始め,年度後半には使用できる資源量も増える見込みであるので,研究を鋭意加速させたい.
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今後の研究の推進方策 |
始めに,物体への付着に対して粒子の初期配置が与える影響を精査し,適切な解析条件を解明する.その上で,凸型断面における粒子の付着量や付着分布を算出し,矩形断面に対する知見と共通点や相違点を明らかにするとともに,表面圧力に基づいた付着量の評価が可能であるか検討する.また,矩形断面についても付着に至るまでの粒子挙動に関する一部の検討は不十分であるので,継続して取り組む.さらに,これまでの検討では,壁面に接触した粒子はその全てが付着するものとして取り扱っているが,その妥当性について,粒子の壁面への衝突角度も踏まえて検討を行う.
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