研究課題/領域番号 |
21K14287
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 東北大学 (2022-2023) 東京大学 (2021) |
研究代表者 |
松本 直之 東北大学, 工学研究科, 助教 (30814389)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 木摺 / 漆喰 / せん断抵抗 / 圧縮ストラット / 付着 / 圧縮強度 / 曲げ強度 / せん断強度 / 砂 / 連動的挙動 / 復元力特性 / 地震被害検証 |
研究開始時の研究の概要 |
明治から昭和戦前に建設された近代木造建築には,伝統技法と近代的技術の混交した多様な技法が用いられた。近年修理周期を迎えた近代木造の構造性能評価のために,それらの混交的技法の構造性能に関する知見が求められている。中でも,木摺漆喰をはじめとする木製下地と左官仕上げの組み合わせによる壁体は,いわゆるラスモルタル壁の確立に至るまでに様々な変遷を経たことが知られているが,現在はそれらの耐力を事前に設計的に評価することは困難である。そこで本研究は、木下地と左官技法を用いた壁体の耐力評価の方法論を実験と解析により確立し,地震被害の検証,今後の予測を可能とすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度は,木摺漆喰壁体の純せん断試験のモデル化,および力学メカニズムの検討を中心に解析的検討を進めた。前者については,純せん断壁試験について,圧縮ストラットと木摺壁を再現した解析モデルを提案し,日本地震工学大会(JEES16)で発表を行った。また,過年度に実施した漆喰の材料強度試験,および純せん断要素実験の結果に基づいて,以下の6要素を主要な抵抗機構と想定し,実験計画を立案した。①木摺―釘のせん断抵抗,②漆喰層の圧縮ストラット,③木摺空きでの漆喰の圧縮抵抗,④木摺と漆喰の付着抵抗,⑤漆喰層自体のせん断抵抗,⑥木摺空きの漆喰と漆喰層とのせん断抵抗。過年度に実施した実験では,純せん断試験で得られた結果を,①~⑥のすべて含まれたものであると仮定し,①を除いた結果から,等価なせん断ばねを作成した。真壁型の木摺漆喰のせん断抵抗要素について,次の段階の要素実験として,上記の要素を分離して計測するための要素実験を考案した。せん断試験体について,木摺のみのもの,木摺と下塗り(下ごすり)漆喰によるもの,木摺+下塗り+中塗り漆喰まで施したもの(枠内において,縁いっぱいまで塗り上げた場合,縁は塗らないものとして,圧縮ストラットの効果を除いたものの2種類を作成する)。これにより,①,③,②を分離して計測することが可能であると推定した。④,⑤,⑥の各要素については,別途要素せん断実験を実施し,計測するものとする。本年度は実験計画の立案,予備解析,試験準備を実施した。 成果の発表としては,昨年度に投稿した漆喰材料の要素実験結果の日本建築学会技術報告集への掲載(2023.10),日本建築学会大会(2023.9)およびWCTE2023(2023.6)での真壁木摺漆喰実験の報告,日本地震工学大会での発表(2023.11)が上げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,モデル化と抵抗要素を分離した力学モデルの検討と予備解析に注力し,力学要素実験の実施には至らなかった。これまで実施した要素実験結果において,複数の抵抗要素が混在して用いられていたことから,それを分離して把握する計画の立案に時間を要したため,実験の実施までを行うという本年度の目標は未達となった。次年度,要素実験の実施と解析モデルへの適合性の検証を行うことで,最終的な目標達成に到達する見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,上述の6つの要素を分離把握するための要素実験の実施と解析モデルへの適合性の検証を行い,要素試験体レベルで漆喰,釘,木材の材料強度からせん断抵抗力を把握する計算方法を整備する。また,プロポーションを変化させた要素せん断試験による圧縮ストラット効果の検証,最後に実大せん断試験を実施し,主要な抵抗要素の要素・材料試験から実大漆喰壁(真壁型)の水平抵抗力を推定する手法を提示する計画である。
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