研究課題/領域番号 |
21K14318
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分23030:建築計画および都市計画関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 大阪市立大学 (2021) |
研究代表者 |
加登 遼 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 助教 (50849396)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ウォーカビリティ / ウォーカブルな近隣環境 / ポイント型流動人口 / 新型コロナウイルス感染症 / 新しい生活様式 / 持続可能性 / 時空間研究 / 近隣環境 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の背景は、徒歩圏で日常生活を送ることが可能なウォーカブルな近隣環境の重要性である。それは、コロナ禍で重要性を増している。それを踏まえた本研究の目的は、「新しい生活様式」としてのウォーカブルな近隣環境を解明することである。その研究方法として、スマートフォンのGPSから収集されたポイント型流動人口というビッグデータを用いて、時間地理学を援用したデータサイエンスを行う。それにより、今まで研究されてきたウォーカブルな近隣環境から変化した、「新しい生活様式」に即したウォーカブルな近隣環境を解明することが期待される。また、Evidence-Based Policyに貢献する研究成果も期待される。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、「新しい生活様式」としてのウォーカブルな近隣環境を解明することである。その研究方法として、スマートフォンのGPSから収集した「ポイント型流動人口」という位置情報履歴ビッグデータを用いて、時間地理学を援用したデータサイエンスを行う。それにより、今まで研究されてきたウォーカブルな近隣環境から変化した、コロナ禍後に向けた「新しい生活様式」に即した、ウォーカブルな近隣環境を解明することができる。 そこで本研究は、2022年度、生活圏や流動人口と新型コロナウイルス感染者数の関係性について研究した。具体的には、研究①として、大阪府茨木市を事例として、ポイント型流動人口を用いて算出した市民の生活圏(Home Range)と新型コロナウイルス新規感染者数の時系列相関を分析した結果、弱い相関しかないことを解明した。次に、研究②として、大阪都市圏を事例として、Google社が提供する場所種類ごとの人流(Human Mobility)と新型コロナウイルス新規感染者数の関係性をランダムフォレスト法により分析した結果、食料品店・薬局および公園での人流と感染者数の関係性は強く、公共交通機関と感染者数の関係性は弱いことを解明した。 これらの結果は、2022年9月5日に大阪公立大学プレスリリースで発表したことが契機となり、2022年9月26日に共同通信社から、新聞社各紙(毎日新聞、中国新聞など20紙)に、「コロナ感染者数と人流「関連は低い」」として掲載された。また、国際広報としてEurekAlert!などから、「Is there a relationship between COVID-19 infections and everyday human mobility in metropolitan area?」として掲載された。以上のように、研究成果の社会的発信も行い、社会貢献に尽力した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究①は、2020年4月から2021年7月までの期間、大阪府茨木市を事例に、個々人の総移動距離と新規感染者数に関する時系列相互相関分析を行った。その結果、総移動距離は1回目の緊急事態宣言発令時には大きく減少したものの、それ以降は、連休を除き大きく変動していないことが判明した。さらに、相互相関が最も高くなるのはラグ6週間後で、総移動距離と新規感染者数は、わずかな正の相関しか見られないことを解明した。この結果は、総移動距離は感染者数と関係性が弱く、総移動距離以外の要因が感染者数に影響している可能性を示唆している。研究①の成果は、2022 年9月1日に、国際学術誌「PLOS ONE(17, 9, e0267335)」に掲載された。 そこで次に、場所ごとの人流に着目した。研究②は、2020年3月から2021年9月までの期間、大阪府・京都府・兵庫県を対象に、各場所における人流(食料品店・薬局、公園、職場、住居、小売店、公共交通機関)と、2週間の合計感染者数の関係性を、ランダムフォレスト法により分析した。その結果、2020年3月以降は、住宅地の人流を除くすべての人流が減少していたものの、食料品店・薬局の人流は、2021年5月以降に増加していることが分かった。さらに、感染者数を減らすためには、2021年1月から2月時点と比べて、食料品店・薬局の人流は‐5%から+5%に制限し、公園の人流は‐20%以上に緩和することが必要であることが明らかとなった。その一方で、公共交通機関の人流と感染者数の関係性が弱いことも判明した。この結果は、全ての人流を抑制する必要はなく、感染状況に応じて特定の場所での人流のみを制御すれば、感染者数の減少に効果がある可能性を示唆している。研究②の成果は、2022 年8月2日に国際学術誌「npj Urban Sustainability(2, 20)」に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、2021年度と2022年度の研究成果を基に、新型コロナウイルス感染症流行による中長期的な変化などに注力して研究を進める。例えば、中長期的な変化として、アーバン・エクソダス(Urban Exodus)と呼ばれる、都心から都心外への移住(人口移動)に関する研究を行っている。これらの研究のように、新型コロナウイルス感染症流行による中長期的な変化に関する研究を蓄積することで、戦略目標「「総合知」で築くポストコロナ社会の技術基盤」と関連して、ポスト・パンデミックに向けて、「新しい生活様式」に関する提案を行うことが期待できる。
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