研究課題/領域番号 |
21K14340
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 立命館大学 (2022) 日本文理大学 (2021) |
研究代表者 |
木村 智 立命館大学, 理工学部, 講師 (60846806)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | テクトニック / 鉄筋コンクリート / ローマ万国博覧会 / アーチ / 無鉄筋コンクリート / イタリア合理主義 / ファシズム建築 / 西洋近代建築史 / 建設技術史 / 建築論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は1942年に開催予定だったローマ万国博覧会(EUR'42)の計画案を中心に、構造と構法を含意したテクトニック(構築)の観点から再評価を行い、新たな建築史を描くものである。今まで負の遺産とされていたEUR'42を構築の観点から検討をすることで、同博覧会がイタリア独自の様式の探求であり、古代ローマ時代の建設技術の継承でもあったことを明らかにする。このように建設技術史と建築史の統合する本研究のアプローチにより、歴史―意匠―構築の橋渡しや、構法や技術を組み入れた建築史研究の新たな手法が創出される。
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研究実績の概要 |
今年度の調査においては、研究対象に対して構造的検討と構法的検討を行なっている。その結果を建築史学会にて報告を行った。特に構造的検討を行うために、3Dモデリングを実施して、簡易な構造解析を行なっている。分析の方法としては、リバースエンジニアリングという考え方を用いた。 設計当初はディ・ベラルディーノの検討によって、圧縮力しか加わらないという計算結果が出ている。また、現代的な構造解析ソフトを用いて解析した結果においても、アーチに軸力しか作用していないことを確認した。また、アーチ内の変位についてもmidas iGenのソフトを用いて解析している。リベラのアーチの断面は楕円形で、ネルヴィは四角形で想定されていた。リベラの案では変位の大きさが切り替わる点にコンクリートの打ち継ぎ目地が設定されていた。ネルヴィ案においては、変位の最大値の点に目地を設けてあり、コンクリートのひび割れを防止する意図を読み取ることができた。 また、構法的検討については、アーチを打設する際の足場や支保工に関してネルヴィが書いた雑誌記事などを調査した。アーチの基礎部分から、鉄造のトラスによって構成された梁を組み上げていくという段取りとなっている。さらに、その支保工を支えるための十文字型の鉄筋コンクリート柱が想定されており、古代ローマ建築由来の半円アーチを無鉄筋コンクリートで作るが故の不合理さが、それを打設する際の大掛かりな足場によって露呈することを指摘した。今後は、現代的な解析ソフトを用いて、構造的検討についてさらに分析を進める予定である。今年度は楕円と四角の2種類のアーチ断面を想定していたが、円形のアーチ断面であると、どういった結果になるかを検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本からでも取得できる図面資料から、ある程度の分析と考察を行ったが、原図面を見ないと最終的な結論が出せないため、やや遅れているという評価をした。資料収集においては、論文の結論付けのために必要な資料の80%程度は入手している状況にある。また、分析・解析については、帝国のアーチの3Dモデリングしたものを現代的な構造解析で評価することができており、おおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
渡航制限が解除されたので、9月に現地にて資料収集を行う予定である。研究に必要な資料について日本からも取得することはできたが、エウル地区の建物内部に入り、一部実測調査をするなどして、さらに詳細な考察を行う予定である。7月には海外の学会で発表予定であるので、近い内容の研究をしている研究者との意見交換を行うことも、研究を推進するための一つの方法であると考えている。
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