研究課題
若手研究
地球観測や電波天文学に応用される受動的なマイクロ波センサ(放射計)の角分解能にはアンテナの口径という物理的な制約があり、大きな口径ほど高い角分解能が実現できる。本技術を宇宙機で運用する際には、一体型のアンテナでは実現しうる口径に機械的な限界があり、複数のアンテナを使用して開口合成する技術を用いればさらに大面積な口径が実現できる。ただし、剛な宇宙構造体では10m程度が現状の限度である。そこで、ソーラーセイルのような超軽量大面積膜構造体や、複数の衛星が編隊飛行するフォーメーションフライト技術を応用することでこの制約を打破し角分解能の飛躍的な向上に直結すると考え、この技術を実験的に実証する。
本研究の目的はソーラーセイルや編隊飛行衛星に搭載可能な大面積マイクロ波干渉計を実現させるために必要な基準信号の無線分配技術を実証する事である。1年度目の成果(ブレッドボードモデルを使用した基準信号の無線分配技術を実証)を国際学会IGARSS2022、IAC2022を含め、別添の国際・国内学会で多数発表した。2年度目の実施計画として、大面積膜構造体に搭載可能な基準同期型サブアレイアンテナの試作を提案していた。計画通りサブアレイアンテナ基板を3回のイタレーションに分けて試作し、電波暗室で各アンテナ基板の特性評価と4枚のサブアレイアンテナの同時運用する事で膜面干渉計として機能することを確認した。さらにこの技術を応用し、測定されるデータから膜面の形状を再構築するアルゴリズムを提案・構築し、シミュレーションと実験の両面で実証した。以上2点の成果は国際学会IGARSS2023の口頭発表に採択された。さらにこの技術を応用する事で複数の衛星間の相対位置を測定する事が可能であることが明らかになり、将来の小天体サンプルリターンミッション等におけるシステム検討を行った。この成果は国内学会第67回宇宙科学技術連合講演会で口頭発表する。
1: 当初の計画以上に進展している
研究実績にも述べているように、2年度目に実施計画をしていた大面積膜構造体に搭載可能な基準同期型サブアレイアンテナの試作を複数回の試作に分けて実施した(原理確認・要素技術の組み上げ・精度向上の合計3イタレーション)。さらに、本技術を応用した膜面形状の測定・再構築技術と、複数機の衛星間の相対位置測定技術をシミュレーションと実験をもって実証した。以上から、本研究は当初の計画以上に進展していると言える。残る研究期間中に実証してきた要素技術(基準同期型サブアレイアンテナ)を集約し、一つのシステムとしてまとめて実証する事で本研究の目的は達成できる。
研究計画調書に記載の通り推進する。具体的にはソーラーセイル超軽量大面積構造体と編隊飛行衛星で運用可能な基準同期型サブアレイアンテナを実現するため、試作機の小型薄型化と周波数の安定性(フェーズノイズ)の安定性の向上化を図る。本技術の実用性については革新的衛星技術実証4号機に搭載が決定されたHELIOS-R干渉計ミッションにて宇宙実証を行う機会を活用し明らかにする。さらに、基準同期型サブアレイアンテナを用いた膜面形状測定技術と衛星間相対位置測定技術を実験をもって実証し、成果を学術論文より報告する。
すべて 2023 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (38件) (うち国際学会 15件)
Acta Astronautica
巻: 208
Frontiers in Space Technologies
巻: 3
Transactions of the Japan Society for Aeronautical and Space Sciences
巻: 20
巻: 181 ページ: 362-376
10.1016/j.actaastro.2021.01.020