研究課題/領域番号 |
21K14380
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分25020:安全工学関連
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研究機関 | 山梨県立大学 |
研究代表者 |
松井 亮太 山梨県立大学, 国際政策学部, 講師 (20897441)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 安全神話 / 無謬神話 / 福島原発事故 / 行動科学 / 意思決定 / 組織行動 / セルフナッジ / エスノグラフィー / 福島第一原子力発電所事故 / ヒアリング調査 / 質的データ分析 / システムアプローチ / 組織間関係 / 組織事故 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、システムアプローチの視点から、福島第一原子力発電所事故前の原子力関係者と社会の関係性(相互作用)に着目し、事故の背景に潜む本質的な問題を探ることを目的とする。研究方法としては、事故前の日本の原子力関係者、および、原発立地地域の地元関係者等を対象として、事故前の状況や問題についてヒアリング調査を行う。そして、ヒアリングデータの質的データ分析を通じて、これまで見落とされてきた「技術と社会の関係性の問題」を明らかにして、原子力分野だけでなく様々な社会・技術システムのさらなる安全性向上に資する提言等を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、国内の原子力関係者(電力会社、原発メーカー、大学研究者、官僚など)を対象にインタビューを行い、研究代表者自身の経験も踏まえて、福島原発事故前の原子力業界全体に安全神話が広がったメカニズムや、原子力業界と社会のあるべき姿について考察した。研究期間全体を通して、20人の原子力関係者に対して計36時間のインタビューを行い、その録音データを文字起こしした上で質的データ分析を実施した。 分析の結果、原子力業界の抱える本質的な問題は、人間には到達困難な無謬(理想)を目指す「無謬神話」であることが明らかとなった。本研究の結論は、「人間には限界があることを忘れて到達困難な理想を目指しても、いずれ破綻する」ということである。原子力業界は大きなトラブルではなく小さなトラブルが起きても社会から強く批判されるのが現状となっているが、安全性をさらに高めるためには「達成困難な理想や無謬を求めない」という発想の転換が必要と考えられる。 この結論については、電力会社や規制関係者などからも賛同を得ており、社会的意義のある研究になったと考えられる。 本研究で得られた知見や原子力関係者に対するインプリケーションなどは、著作『不合理な原子力の世界:行動科学と技術者倫理の視点で考える安全の新しい形』として2024年3月に五月書房新社から刊行し、社会に広く発信することができた。書籍の刊行に加えて、学会等での講演も行ったことで、福島原発事故から学ぶべき教訓について議論を深めることができた。
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