研究課題/領域番号 |
21K14407
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
藤村 卓也 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (80757063)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 層状化合物 / スクロール / 歪み / 層状複水酸化物 / 希土類 / 光物性 / ナノスクロール |
研究開始時の研究の概要 |
ナノシート状化合物は条件によりシートが巻き上がったナノスクロールへと変化する。ナノスクロールが形成されると、ナノシートの外側と内側では長さが異なることになり、結晶骨格内に構造的な歪みが生じることが想像できる。希土類イオンの発光特性が結晶場の影響を受けることを考慮すると、スクロール化やスクロールの構造(内径や壁面間距離)変化により希土類含有ナノシートの発光特性の変化を誘発・制御できると考えられる。本研究ではスクロール中に生じた歪みの状態とナノシート結晶中にドープした希土類イオンの発光特性との相関関係を明らかとする。また外部刺激で誘発される形態変化により発光特性が変化する新規物質の創製を目指す。
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研究実績の概要 |
昨年度までの成果で発光性ナノスクロールの層間イオンを交換した場合、ナノスクロールの発光挙動に影響を与えうることを見出した。一方ナノスクロールの選択的合成は困難であり、形状が異なる粒子(板状粒子や花弁状粒子)が同時に生成することがわかっている。そこで2022年度はナノスクロールの選択的に得られる合成方法の開発を目指した。また新たに発光性希土類をドープしたペロブススカイト層状化合物の合成およびこのナノスクロール化を検討した。 検討条件として合成方法(共沈法および熟成、均一沈殿法)、合成時間、温度、スクロールのテンプレートとなる界面活性剤の濃度などを検討した。均一沈殿法を用いた場合はスクロールが生成する割合が多くなる一方で、合成時間が長くなるにつれ花弁状粒子および板状粒子の割合が増加する傾向が見られた。これは合成時間が長い場合は溶解再析出反応が進行し、ナノスクロールが溶解して安定な板状および花弁状粒子が生成したためであると考えられる。その他の条件を精査し、ある程度スクロールの生成率を向上させることができたものの、単相でスクロールを得るには至らなかった。 上記の検討とあわせ、層状ペロブスカイトナノスクロールの合成を試みた。発光性希土類イオンを賦活剤としてドープした層状ペロブスカイトの合成に成功するとともに、ドープされた賦活剤は発光特性を維持していることを明らかとした。この化合物の剥離・スクロール化条件を探索した。現在まで単相でスクロールを得るには至っていないが、特定条件下においてロールを形成する挙動が見られた。今後は条件を精査し、単相でスクロール得ることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の合成経路探索によりある程度スクロールの選択性を上げることに成功している一方で、目的物を単相で得るには至っておらず、発光特性と構造の関連を詳細に調査するには至っていない。また成果発表等は実施しているが論文発表には至っていないことから、当初の予定と比べて進捗が遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きナノスクロールの合成手法の確立を目指し、スクロール合成のテンプレートとして水溶性ポリマーやシリカナノ粒子を導入する。また母体として合成手法がある程度確立されているチタニアナノスクロールなどを用いる予定である。得られた試料においてイオン交換による構造変化と発光特性の関係性について詳細な調査を進める。発光中心となる賦活剤として発光性希土類イオンに加え遷移金属イオンも検討する。これらの発光特性の調査にあたり近赤外光領域での測定を可能とする測定装置を自作する。また単相の試料が得られ次第精密な結晶構造解析を行い、歪みの影響を明らかとする。
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