研究課題/領域番号 |
21K14421
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26030:複合材料および界面関連
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研究機関 | 地方独立行政法人京都市産業技術研究所 |
研究代表者 |
野口 広貴 地方独立行政法人京都市産業技術研究所, 京都市産業技術研究所, 次席研究員 (50796167)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | セルロースナノファイバー / ナノ粒子 / 複合樹脂 / 導電性 / 熱伝導性 / 金ナノ粒子 / フィラー / コンポジット / 金属被覆 / 熱伝導 / 樹脂コンポジット |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,樹脂用の熱及び電気伝導性フィラーとして金属被覆したセルロースナノファイバー(CNF)を開発する。CNFのナノ繊維形状を活用することで,樹脂内部における3次元伝導性ネットワークの効率よい形成と,それに伴う,金属被覆CNFの少量添加での樹脂への熱・電気伝導性発現が期待できる。本研究では,①金属被覆のためのCNFの前処理(イオン性官能基の導入や触媒付与)条件と後続の金属結晶成長過程との相関,②金属被覆CNFを添加した樹脂の内部構造解析およびエネルギー伝導性との相関を明らかにすることで,開発を達成する。
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研究実績の概要 |
本研究では、金属で被覆したセルロースナノファイバー(CNF)を開発し、樹脂用の熱及び電気伝導性フィラーとしての性能を評価する。近年、スマートデバイスや電気自動車の著しい発展に伴い、それらの部材として熱及び電気伝導性樹脂の需要が高まっている。一般的に樹脂用フィラーとしてはマイクロスケールの無機微粒子が利用されているが、樹脂に熱及び電気伝導性が発現するためには30vol%以上のフィラー添加が必要とされている。多量のフィラー添加は樹脂の重量増加や脆化を招くことから、少量の添加で熱及び電気伝導性(エネルギー伝導性)を発現可能なフィラーの開発が求められている。本研究では、高アスペクト比、高強度、低比重などの特徴を有するセルロースナノファイバー (CNF) に着目し、CNF界面に金属を被覆することでエネルギー伝導フィラーとして活用することを目指す。高アスペクト比であるナノフィラーは樹脂内部で三次元的なネットワーク構造を形成しやすいことから、CNFの界面にエネルギー伝導性を有する金属を連続的に配置することで、従来の微粒子状フィラーよりも効率よくエネルギー伝導パスを構築可能であることが期待できる。本研究の達成により、フィラー添加量削減による複合樹脂の軽量化、成形性の改善、低コスト化が期待できる。 R4年度は金被覆CNFと樹脂の均一な複合を目的に研究を進めた。それに先立ち、まずはスケールアップ製造のための条件検討を実施し、約100倍のスケールアップ製造でも凝集なく均質に金ナノ粒子をCNFに被覆可能な調製条件を見出した。スケールアップ製造で得た金被覆CNFを用いて、PP、EVA、PVAとの複合化実験を実施した。結果として、外観は金被覆CNFが比較的均一に樹脂に分散したフィルムを作製することができた。特にPVAをマトリックスとした場合に金被覆CNFの分散性が高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R4年度の前半は金被覆CNFのスケールアップ製造条件の調査に注力した。CNF 数十mgスケールで実施した被覆条件を単純にスケールアップすると、処理工程中に金被覆CNFが凝集してしまい(温度勾配や攪拌速度の影響であると考えられる)、以降の樹脂との複合実験に利用できないという課題が生じた。そこで、改めて、CNF1g スケールにて被覆条件を検討した。金被覆処理時のCNF濃度、処理温度、処理開始時のpH、CNFに対する四塩化金酸塩(金ナノ粒子前駆体)添加量、還元剤種類及び添加量と添加方法などを検討した結果、CNF濃度0.01wt%、CNF:Au = 1:5、pH 6、アスコルビン酸を還元剤として滴下する条件において、金微粒子が凝集することなくCNF上に均一に析出することを確認できた。本条件で得られた金被覆CNFの金被覆量は77.3wt%、導電率は1.38x10^4 S/mとなった。 得られた金被覆CNFを用いて樹脂との複合化実験を実施した。複合化には、金被覆CNFと粉末状のマトリックス樹脂を溶媒に分散させたのちに溶媒を留去する方法、もしくは溶媒をろ過して得た複合体を熱プレスする方法を用いた。マトリックス樹脂として、極性の異なる3種類の樹脂(PP、EVA、PVA)を選択した。また、分散媒として、水からトルエンまで極性の異なる種々の溶媒を用い、樹脂との複合に与える影響を調査した。様々な分散媒のうち、金被覆CNFは水中で最も良分散し、最終的な樹脂中における分散も、水分散溶液から作製した場合において最も良好であった。またマトリックス樹脂間の比較では、金被覆CNFは最も極性の高いPVA中において、特に良好に分散していた。これらの結果は、金被覆CNFの界面が親水的であること、PPなどの疎水的な樹脂に複合化する際には、界面の疎水化処理や相溶化剤の添加などの工夫が必要であることを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は主に3つの検討を実施する。1つ目は、金被覆CNF複合PVAの熱及び電気伝導性の評価である。伝導特性が発現する添加量の閾値と、フィラーを一定量加えた際の伝導特性を一般的なフィラーと比較し、ナノファイバー状のフィラーがエネルギー伝導パスの形成に効果的であるかを評価する。さらにフィラーのアスペクト比が伝導特性に及ぼす影響を詳細に調査するために、短繊維のセルロース結晶であるセルロースナノクリスタルを金被覆したサンプルや、金ナノ粒子を樹脂に複合し、金被覆CNFと伝導特性を比較する。また、伝導特性と伝導パスの関係性を視覚的にとらえるために、複合樹脂のCTスキャン測定や、樹脂断面の電子顕微鏡観察を実施する。2つ目は、金被覆CNFの疎水化処理によるPPへの分散性改善検討である。PPは汎用的な樹脂であるため、PPへ良分散させ、伝導特性を付与することができれば産業的な意義が大きい。金被覆CNFの疎水化処理法としては、金ナノ粒子の界面改質法として一般的に用いられているアルカンチオールによる処理などを検討している。 3つ目は、金以外の金属のCNFへの被覆検討である。本研究で開発したCNFヘの金被覆法を、例えば銅やNiなどに展開できれば、触媒やより安価なフィラーなど、金属被覆CNFの用途が拡大することが期待できる。
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