研究課題/領域番号 |
21K14426
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
寺本 武司 神戸大学, 工学研究科, 助教 (10781833)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 形状記憶合金 / マルテンサイト変態 / βチタン形状記憶合金 / マイクロメカニクス / マルテンサイト変態過程 / 自己調整組織 / 組織形成過程 |
研究開始時の研究の概要 |
形状記憶合金は小型・ハイパワーな高性能アクチュエータ材料としての応用が期待されているが,繰り返し動作により内部に構造欠陥が蓄積し機能劣化を生じることが問題となっている.しかし構造欠陥の発生機構は十分に理解されているとは言えない.本課題では形状記憶合金駆動時に生じるマルテンサイト変態過程において必然的に内部構造に発生する応力集中とそれに伴う構造欠陥発生メカニズムを解明する.さらに合金の格子定数を制御することで発生する内部応力を制御し,形状記憶合金動作時に発生する構造欠陥を低減することにより,繰り返し使用時の機能劣化を抑制した高性能アクチュエータ材料を創生する材料設計手法を示す.
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研究実績の概要 |
本研究課題では形状記憶合金のマルテンサイト変態過程において発生する転位の抑制手法を示すことを目的とする.本年度はマルテンサイト変態時の転位の発生箇所を明確にするために,加熱・冷却サイクルを加えて繰り返しマルテンサイト変態を生じさせたTi-Nb-Al形状記憶合金のα”マルテンサイト組織において透過型電子顕微鏡(TEM)により組織観察を実施した.研究当初はマルテンサイト変態過程により発生する転位はマルテンサイト変態により発生したマルテンサイト晶同士の衝突界面に集中すると予測していたが,転位はマルテンサイト晶同士の界面ではなく,マルテンサイト晶内部に分布しており,個々のマルテンサイト晶に転位の発生源である応力集中箇所が存在することが示唆された.そこで個々のマルテンサイト晶の応力集中箇所を明らかにするためにマルテンサイト晶の内部応力状態をマイクロメカニクスにより数値解析した.解析に必要な弾性率は第一原理計算により算出した.マルテンサイト晶内部には一般的に微細な内部双晶が形成される.既往の理論では内部双晶は母相とマルテンサイト相の整合性を保つために導入されると考えられている.内部応力解析の結果,内部双晶はマクロには母相とマルテンサイト相の整合性を保つ効果があるが,ミクロには双晶導入部分の応力が上昇し,応力集中が発生することが示唆された. また応力集中の度合いは個々のマルテンサイト晶の応力集中の高さにはマルテンサイト組織を制御する上で重要とされる格子定数だけではく,弾性率にも影響されることが分かった.上記の内容を学術論文にして投稿中である.また日本金属学会2023年春期講演大会にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マルテンサイト変態時の転位の発生機構が研究当初に想定されていた内容と異なることが分かったが,個々のマルテンサイト晶の応力集中箇所を数値解析により予測することができた.最終年度は組織制御が形状記憶特性に与える影響を調査する予定であったが現時点では材料設計指針は示されていないため,2023年度の前半は引き続き数値解析により,パラメータの制御指針を示す予定である.その後,得られた制御指針を実際の材料に適用してその影響を調査する.
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今後の研究の推進方策 |
これまでのマイクロメカニクスによる数値解析の結果から応力集中の度合いには一般的なマルテンサイト組織の制御パラメータである格子定数以外に弾性率が影響することが示唆された.次年度は引き続きマイクロメカニクスによる数値解析により応力集中を低減するための弾性率,格子定数の制御指針を調査する.得られた指針に基づく格子定数,弾性率の制御がマルテンサイト変態を繰り返した際に発生する転位及びマルテンサイト変態温度の変化量に与える影響を実験的に調査する予定である.
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