研究課題/領域番号 |
21K14441
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 新居浜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
真中 俊明 新居浜工業高等専門学校, 環境材料工学科, 准教授 (60805068)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | アルミニウム合金 / 表面組織制御 / 水素脆化 / 表面強加工 / 析出組織 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、Al-Zn-Mg系合金に対して、表面層を耐水素脆化特性に優れる粗大・低密度な粒界析出組織を有するナノ結晶粒層、内部は高強度を発現する微細粒内析出物を有する組織へと傾斜的に制御し、従来の強度を犠牲にした水素脆化防止策から脱却した強度と耐水素脆化特性を両立する新しい組織制御法を確立することである。これを達成するために、表面強加工法によるナノ結晶粒層の形成、湿潤大気中での低ひずみ速度引張試験による水素脆化感受性の評価、金属組織と水素挙動解析に基づいた耐水素脆化特性発現機構の解明に取り組む。
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研究実績の概要 |
Al-Zn-Mg系合金は時効硬化により高強度が得られるが、ピーク時効の状態では環境から侵入した水素による水素脆化感受性が高いことが問題となっている。本研究では水素が侵入する表面近傍の組織制御によって、高強度と高耐水素脆化特性の両立を試みている。2023年度は前年に用いたAl-Zn-Mg3元合金よりも溶質元素量が多く高強度化が期待されるAl-Zn-Mg-Cu系合金に対して、表面すべり摩擦処理(SFT)とその後の時効処理を適用し、断面組織観察、断面硬さ測定、低ひずみ速度引張試験による水素脆化感受性の評価を行った。SFTにおいては、荷重、スライド回数、スライド速度をパラメータとして、複数の加工条件を設定して、断面組織観察や硬さ測定を実施して適切な加工条件を選定した。その結果として、湿潤大気中での低ひずみ速度引張試験による水素脆化感受性の評価において、従来の過時効処理よりも高強度でピーク強度に迫る高強度を示しつつ、水素脆化が抑制される条件を見出すことができた。破面観察を行うと、SFTを施した表面では水素脆化による粒界亀裂は発生していないことが確認された。高強度と耐水素脆化特性の両立が達成できた要因を検討するために粒界近傍組織の観察をFE-SEMを用いて反射電子線像観察により行った。SFT後に時効処理を施した試料では表面近傍で結晶粒の微細化と析出物の不連続化が生じていると推察されたが、形成された組織が微細なため、透過型電子顕微鏡を用いた観察と比較検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は前年に用いたAl-Zn-Mg3元合金よりも溶質元素量が多く高強度化が期待されるAl-Zn-Mg-Cu系合金に対して、表面すべり摩擦処理(SFT)とその後の時効処理を適用し、断面組織観察、断面硬さ測定、低ひずみ速度引張試験による水素脆化感受性の評価を行った。SFTにおいては、荷重、スライド回数、スライド速度をパラメータとして、複数の加工条件を設定して、断面組織観察や硬さ測定を実施して適切な加工条件を選定した。その結果として、従来の過時効処理よりも高強度を示しつつ、水素脆化が抑制される条件を見出すことができた。その加工条件で形成された組織をイオンミリングによる鏡面仕上げ後にFE-SEMを用いて反射電子像観察を行い、粒界上析出物の分布状態観察を行った。これまでに得られた成果は学会にて発表したほか、1報論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は強度と耐水素脆化特性の両立が達成できた要因を考察するために、水素挙動解析や粒界近傍組織の詳細な観察を行う。前者は昇温脱離分析法を用いて、微細組織を変化させたことで水素のトラップ状態が変化したのかを検討する。後者については外部機関にて試料断面における透過型電子顕微鏡観察を計画している。それらの結果をまとめて、学会発表および論文投稿につなげる。
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