研究課題/領域番号 |
21K14453
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分27020:反応工学およびプロセスシステム工学関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中川 祐貴 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00787153)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | レーザーアブレーション / レーザードーピング / ナノ秒パルスレーザー / 表面改質 / 水素吸蔵金属 / チタン / 水素透過 |
研究開始時の研究の概要 |
水素吸蔵金属の吸蔵反応において、金属の表面状態は重要である。例えば、チタンでは、表面に形成した酸化被膜により水素分子の解離活性が阻害され、水素吸蔵速度が低下(失活)する。本研究では、水素貯蔵材料合成においては適用例の少ないレーザープロセスに着目する。 チタンなどの水素吸蔵金属の表面を、有機溶媒やガス雰囲気中でレーザードーピングにより改質することで、炭素(C), 窒素(N)、ホウ素(B)などのドープする元素種やナノ構造の違いが、吸蔵・失活速度に及ぼす影響について解明する。
|
研究実績の概要 |
水素吸蔵金属のチタンの表面改質による水素吸蔵温度改善を目的として、有機溶媒中や窒素雰囲気中で純チタンに波長532 nmのナノ秒パルスレーザー照射を行った。 アセトン中で純チタン粉末に非集光での照射を行うと少量のTiCが生成し、レーザー照射によりCがドープされることが分かった。また、1回目の水素吸蔵温度は未照射のチタンと同様に400℃以上であった。水素化・脱水素化による活性化処理後の2回目の吸蔵温度を評価したところ、未照射のチタンでは吸蔵温度が170℃と低温化した。また、アセトン中でレーザー照射した試料は260℃, 380℃の2段階で水素を吸蔵した。次に、ガス環境チャンバーを用いて、窒素ガス中で純チタンペレットへの集光照射を行ったところ、照射部ではアブレーションによる表面酸化被膜の除去やTiNx層の生成を観測できた。また、未照射のチタンペレットとレーザー照射したペレットの1回目の水素吸蔵温度は400℃以上であったが、活性化処理後の2回目の水素吸蔵温度は、未照射材では200℃程度であり、レーザー照射材は150℃であった。つまり、レーザー照射材は未照射のチタンよりも低い吸蔵温度を示した。これはTiNx層による表面改質効果によるものと考えられる。 この他に、FeとBN粒子の水素雰囲気ミリングによりナノ複合材料を作製し、加熱TEMその場観察を行うことで、加熱と電子線照射によるFeへのBやNのドープの有無について検証した。1000℃までの加熱処理のみでは窒化物と推測される回折ピークが観られたが、加熱TEMその場観察(加熱と電子線照射)ではNが顕著に放出されることが分かり、Feの窒化やホウ化は生じていないと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従って、チタンの有機溶媒中や窒素ガス中でのパルスレーザー照射によるCやNドープを色々と試みてきており、CやNをドープすることができただけではなく、Nドープにより吸蔵温度を低下できることが分かった。また、照射条件についても、集光照射によりアブレーションを起こすことで、酸化被膜を除去し他元素ドープを行うことができた。得られた成果について、国内学会で発表を行った。 また、FeとBNのナノ複合材料の加熱TEMその場観察では、加熱中の電子線照射による効果に関する成果を得ることができ、レーザープロセスと比較検討できる結果を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
チタンの有機溶媒中でのYAGレーザー照射について、アセトン以外にヘキサンなども候補として、引き続き最適な照射条件の検討を進める。窒素ガス雰囲気での照射については、集光照射時に試料ステージを固定していたため、ペレットの一部分への選択的な照射しか行えていない。そこで、新たに小型のレーザー照射セルを開発し、ステージで走査しながら照射することで、ペレット広範囲への照射を行う。また、TiNx層形成による水素吸蔵温度低下のメカニズムを明らかにするため、活性化処理後の試料の結晶構造解析や表面化学結合状態の分析を行う。
|