研究課題
若手研究
生物の代謝の理解には、代謝フラックス(代謝反応速度)の計測が重要である。しかし、従来の適用対象は大腸菌など単細胞生物が中心であり、マウスなどにおける臓器内・臓器間の複雑な代謝を考慮した代謝フラックス解析は達成されていない。本研究では、13C-グルコース投与後のマウスの血液・肝臓・筋肉のメタボロームデータを用いて、糖投与後のマウスの臓器内・臓器間(臓器連関)の代謝フラックスの時間変化を解明する。さらに医学への応用として、肥満モデルマウスに対しても同様の実験・数理解析を行い、肥満に伴う代謝異常を臓器連関の代謝フラックスとして定量的に明らかにする。
生物の代謝の理解には、代謝フラックス(代謝反応速度)の計測が重要である。しかし、従来の代謝フラックス解析手法では、生体内での臓器間の代謝物の移動を考慮できない。本研究では、13C-グルコース投与後のマウスの血液・肝臓・筋肉のメタボロームデータを用いて、糖投与後のマウスの臓器内・臓器間(臓器連関)の代謝フラックスの時間変化を解明する。さらに医学への応用として、肥満モデルマウスに対しても同様の実験・数理解析を行い、肥満に伴う代謝異常を臓器連関の代謝フラックスとして定量的に明らかにする。当該年度は、13C-グルコース投与後のマウスの血液・肝臓・筋肉のメタボロームデータを計測した。その結果、解糖系の代謝物であるグルコース・グルコース6リン酸・乳酸は、肝臓ではグルコース投与後に濃度が上昇し、13C-で標識された同位体の割合も40%以上まで上昇した。一方で、筋肉のグルコースと乳酸は、肝臓と同様の濃度上昇および同位体割合の上昇がみられたが、グルコース6リン酸の濃度変化は見られず、同位体割合も20%程度までしか見られなかった。これは肝臓と筋肉の臓器で解糖系の活性が異なること、筋肉の乳酸は筋肉の解糖系よりも血液に由来することを示唆している。また、肝臓ではグルコース6リン酸の濃度はグルコースの10%程度であるが、筋肉では4倍程度といったように、代謝物館の濃度も臓器ごとに異なることが観察された。これは臓器間で異なる代謝制御が機能していることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
代謝フラックス解析の方法論の開発に成功し、またメタボロームデータも順調に計測されている。次年度以降に実際のデータ用いて代謝スラックスを推定する準備が整っている。
前年度に開発した手法および当該年度に計測したデータを用いて代謝フラックスを推定する予定である。代謝フラックスを推定したのちには、糖投与後の各臓器内での代謝フラックスの時間変化や、血液を介して臓器をまたぐ反応経路の代謝フラックス(臓器間の代謝フラックス)の時間変化を明らかにする。具体的には、肝臓での糖生産と糖消費の切り替わり、およびCori回路などの代謝フラックスの時間変化などを定量する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件)
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