研究課題/領域番号 |
21K14478
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分28010:ナノ構造化学関連
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
尾本 賢一郎 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特任助教 (40820056)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 脂質キュービック相 / 有機-無機ハイブリッド / リオトロピック液晶 / 超分子化学 / 膜タンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
固定化酵素を筆頭に膜タンパク質の生体機能を活用したバルク材料の開発が探究されており、膜タンパク質を生きた状態で固定化させる媒体が求められている。膜タンパク質の固定化媒体として、脂質二分子膜と水チャネルからなるリオトロピック液晶「脂質キュービック相」が注目されているが、乾燥や温度変化などの周辺環境によりナノ構造が容易に崩壊するといった構造脆弱性の課題を有している。本研究では、脂質キュービック相の脂質二分子膜に高分子架橋を施すことで、様々な温度・乾湿条件においてもナノ構造を安定に維持可能な高分子性バルク材料「架橋脂質キュービック相」を開発し、その膜タンパク質固定化媒体としての活用可能性を追求する。
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研究実績の概要 |
膜タンパク質を天然の状態のまま取り込めるバルク材料として脂質二分子膜と水チャネルからなるリオトロピック液晶「脂質キュービック相」が注目されている。本研究課題では、脂質キュービック相の脂質二分子膜に高分子架橋を施すことで、さまざまな温度・含水条件でもそのナノ構造を保持可能な、高分子性のバルク材料「架橋脂質キュービック相」を開発し、その膜タンパク質固定化媒体としての活用可能性の追求を目標としている。 2021年度はまず、架橋脂質キュービック相を構築するための人工脂質として、親水性末端に架橋部位としてアルコキシシリル基を有する有機ケイ素脂質の設計・合成を実施した。次いで、合成した有機ケイ素脂質が示す重合反応についてサイズ排除クロマトグラフィー及び質量分析を用いて評価を行った。結果として、含水条件におけるゾル-ゲルにより脂質分子間のシロキサン架橋が進行することで、脂質オリゴマーを形成可能であることが確認された。さらに、含水条件において有機ケイ素脂質が構築するナノ構造について、偏光顕微鏡観察と小角エックス線散乱測定を用いて詳細に評価を行った。結果として、有機ケイ素脂質がラメラ相やキュービック相をはじめとしたさまざまな液晶構造を、時間発展的に形成することを明らかにした。以上の結果は、合成した有機ケイ素脂質が、本研究が目指す「架橋脂質キュービック相」を形成するための有効な構成要素として機能しうることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、架橋部位として親水性末端にアルコキシシリル基を有する有機ケイ素脂質の合成に成功した。また、合成した有機ケイ素脂質が、架橋した状態でキュービック相をはじめとした液晶構造を形成できることがわかり、架橋脂質キュービック相を構築するためのめどがたった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、まず「架橋脂質キュービック相」を形成するための条件検討を行う。具体的には、有機ケイ素脂質が含水条件において示すゾル-ゲル反応の進行と、時間発展的な液晶構造の形成過程との間の相関について詳細に評価することに加えて、必要に応じて主鎖・架橋部位が異なる有機ケイ素脂質の設計・合成を行い、高いナノ構造の秩序性を持つ「架橋脂質キュービック相」を形成する条件の最適化を行う。「架橋脂質キュービック相」の構築後は、その構造解析と膜タンパク質やそれをモチーフとした人工分子との複合化を検討する。
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