研究課題/領域番号 |
21K14503
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
平田 研二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (40828282)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 窒化物 / 圧電体 / 薄膜 / 第一原理計算 / 圧電材料 / 相平衡 |
研究開始時の研究の概要 |
ScAlNの薄膜は高い圧電性能を有し、モバイル通信用の高周波フィルタに利用されているが、今後の高周波数帯域での使用のためにさらなる性能向上が求められている。この材料では理論計算により予測された圧電定数に対し、実験ではその性能の3分の1程度の実現に留まっている。本研究では、圧電性を示すウルツ鉱相にScを高濃度に固溶させる手法を確立することで、ScAlNの圧電性能を飛躍的に向上させる技術開発につなげる。
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研究実績の概要 |
昨年度、ScAlN薄膜の下地層として岩塩相YNの<111>配向膜が有望であることを第一原理計算によって見出した。しかし、YNの良好な配向膜を得ることが難しく、高濃度にScを含有した薄膜の作製と高い圧電性能の発現には至らなかった。YN薄膜は大気中で変色し、酸化が著しいことがわかった。したがって、反応性スパッタリングで製膜している過程で雰囲気中の微量な酸素が結晶中に取り込まれやすく、<111>配向に悪影響を与えている可能性がある。ゆえにYNをScAlN薄膜の下地層として利用する場合は、スパッタ製膜前の真空度を高くする必要があると考えられる。 そこで本年度は研究方針を見直し、非常に薄いAlNを下地層として導入したScAlN薄膜においてウルツ鉱構造の配向性向上を試みた。ScAlN薄膜では、ウルツ鉱結晶の配向性が向上することによって高い圧電性能の発現につながると考えられている。一般にSc濃度が高くなるほど配向性は低下する傾向にあるため、この挙動を抑制する方策を検討することは工業的に重要な知見を与える。今回はサファイア基板を使用し、下地層AlNを導入したものとそうでないものの配向性を比較した。その結果、下地層AlNを導入することでウルツ鉱構造のc軸方向だけでなく面内方向にも配向した薄膜を作製することに成功した。さらに、Scを30%以上含有したScAlN薄膜でも高い配向性を確認することができた。このときの配向度は反応性同時スパッタリングの雰囲気圧力に大きく影響を受ける傾向があった。ウルツ鉱結晶の配向性が向上することによって、高い圧電性能の発現につながると期待されるため、AlN系固溶体薄膜において非常に薄いAlN下地層を導入することの有効性を今後は検証していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一原理計算で予測した物質を下地層として導入したが、ScAlN薄膜の作製において有効な結果を得ることはできなかった。しかし一方で、非常に薄いAlN下地層の導入によってウルツ鉱構造のc軸方向だけでなく面内方向にも配向したScAlN薄膜を作製することができた。この効果をScAlNや他のAlN系固溶体薄膜に展開することで、高い圧電性能の発現に応用できる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
透過型電子顕微鏡で下地層AlNとScAlNの界面の観察などを実施する予定である。また、他のAlN系固溶体でも下地層AlNを導入し配向性や圧電特性を調査する予定である。
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