研究課題/領域番号 |
21K14505
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分28040:ナノバイオサイエンス関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小宮 麻希 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (00826274)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 人工細胞膜 / イオンチャネル / 薬剤スクリーニング |
研究開始時の研究の概要 |
我々は,これまでの先行研究において,有機ナノ粒子を包埋した脂質二分子膜に対して膜平行電圧を印加すると,有機ナノ粒子由来の膜貫通方向の電流が増強されるという新規現象を見出し報告してきた.しかし,その作用機構については明らかとなっていない.本研究では,この作用原理について,脂質二分子膜の膜物性の観点から調査し,さらに,この膜平行電圧という新たな摂動を生体ナノ材料であるイオンチャネルを標的とした解析系へと展開する.それにより,膜平行電圧がイオンチャネルの開孔制御因子として機能し,薬剤スクリーニングといった医療的応用性の高いイオンチャネル解析系に有用であることを示す.
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研究実績の概要 |
膜貫通タンパク質の1種である電位依存性イオンチャネルは、内部に有する孔を開閉させることで生体膜内外におけるイオンの輸送を担っており、生体維持に不可欠な活動電位の発生に重要な役割を果たしている。従来、その機能を解析する上で膜貫通方向に電圧を印加することで開孔の促進が行われてきたが、不活化により測定が困難となる場合が多々存在した。我々は人工細胞膜系において不活化したナトリウムイオンチャネルに対し、膜平行電圧という新たな入力を加えることで再活性化させることが可能であることを見出したが、膜平行電圧がどのようにイオンチャネルの開孔を促しているのか、その作用メカニズムは依然として謎のままであった。我々は膜平行電圧が膜を構成する脂質二分子膜構造の物性に作用しているのではないかと推測し、前年度において立ち上げた人工細胞膜の蛍光イメージング系を用いて膜物性に対する膜平行電圧の効果の定量的評価を推し進めた。その中で、膜平行電圧を印加するために膜支持体上に付加したTi電極上の電圧源との接触部が膜平行電圧の長時間印加に伴い酸化し、接触抵抗が増大することで膜平行電圧がかかりにくくなるといった問題に直面した。そこで、長時間の膜平行電圧印加に耐えうる膜支持体を作製するべく、酸化が生じないAuを電極とした新たな膜支持体の作製プロセスの検討を行った。来年度は、接触抵抗の増大を引き起こさない新たな膜支持体の作製プロセスを確立し、引き続き蛍光イメージング系を用いて膜平行電圧印加による膜物性への効果を定量的に評価していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜平行電圧がイオンチャネルの開孔を促進する作用原理を解明するにあたり、膜の構成成分である脂質二分子膜構造の物性が膜平行電圧によって変化する可能性が考えられたことから、我々は前年度に立ち上げた人工細胞膜の蛍光イメージング系を用いて、膜平行電圧印加が脂質二分子膜の物性へ与える効果の定量的評価、及び、再現性の確認を進めていった。その中で、膜平行電圧印加のために膜支持体上に付加したTi電極の電圧源との接触部が、長時間にわたる膜平行電圧印加によって酸化し、接触抵抗が増大することで膜平行電圧がかかりにくい状態になることが判明した。膜平行電圧印加による膜物性の経時変化を追跡するためには、膜平行電圧を長時間にわたり印加する必要性がある。そこで、酸化が生じないAuを電極材料に用いた、新たな膜平行電圧印加のための膜支持体の作製に取り組んだ。Auは膜支持体の基板材料であるテフロンフィルム、及び絶縁膜層であるSiO2との密着性が低い物質であったことから、Tiを密着層として間に挟んだ作製プロセスを考案した。このプロセスで作製した膜支持体の性能の確認と作製効率の向上の検討を現在行っている最中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、Auを電極とした新たな膜支持体の作製プロセスを確立し、この膜支持体を用いて引き続き蛍光イメージング系を用いた定量的な膜物性測定を行う。また、現在は直流電圧源を膜平行電圧源として使用しているが、様々な電圧波形を印加可能な低ノイズの電圧源の開発も進行中であり、どのような入力電圧がイオンチャネルに対し最も大きな開孔作用効果をもたらすのかも調査していく予定である。
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