研究課題/領域番号 |
21K14545
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分30010:結晶工学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
上杉 謙次郎 三重大学, 研究基盤推進機構, 准教授 (40867305)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 窒化物半導体 / 顕微分光 / 深紫外発光ダイオード / 原子間力顕微鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
III窒化物半導体を用いた発光素子は、結晶成長中の表面平坦性の揺らぎや貫通転位を主たる起源とした混晶組成や膜厚の不均一性を内包するため、発光効率に空間的な分布が生じる。高効率な発光素子の実現には、顕微分光測定を用いて発光効率分布を評価する必要がある。本研究では、発光素子の局所領域に限定して電流を注入することで、電流注入動作している素子の発光効率分布を、電流密度の不均一性に影響されることなく高空間分解能で可視化することを目的に行う。
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研究実績の概要 |
III族窒化物半導体を用いた発光素子の中でも特にAlGaNをベースとした深紫外発光ダイオード(DUV-LED)は殺菌用紫外線光源として注目されているが、発光効率の低さが社会実装を妨げている。既存の手法では、電流注入動作時のLEDのミクロな発光効率分布を正確に評価できず、評価結果を素子設計と結晶成長条件へフィードバックすることが困難であることが一因であると考えられる。本研究は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた局所電流注入型の顕微エレクトロルミネッセンス測定手法を確立し、DUV-LEDの電流注入動作時の発光効率分布を、電流密度分布の影響なく高空間分解能で可視化することを目的とする。 2022年度は、昨年度設計し作製に着手した試料ホルダが完成し、関連する電気的・光学的計測器類と併せてAFMへの組み込みを実施した。AFM本来の試料ステージに対して重量のある試料ホルダを載せることでAFM形状像の劣化が懸念されたが、適切な走査条件においてノイズやドリフトのない良好な形状像の取得に成功した。p-GaN層に接触させたカンチレバーからDUV-LEDに対して電流注入を実施し、カンチレバーを定点接触させた状態で電流掃引にてダイオードライクなIVカーブの取得に成功した。並行して測定対象となるDUV-LEDの高品質化も実施した。本年度は活性層直下のn-AlGaNの表面平坦化に取り組み、ステップテラス構造の蛇行に起因するピット形成の抑制を達成しつつ導電率の向上も確認した。これまでにカソードルミネッセンスによってピットが暗点となることが確認されていたため、ピットの排除は転位等の結晶欠陥に由来する非発光再結合中心をより明瞭に可視化するうえで意義ある成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は新規に作製した試料ホルダを用いて良好なAFM形状像の取得に成功した。また、カンチレバーをDUV-LED のp-GaN層に定点接触させて電流注入を実施し、電流掃引にてダイオードライクなIVカーブの取得に成功した。しかし、試料からのEL発光は確認できていない。十分な発光強度を得るためには注入する電流値をさらに増大させる必要があるとみられるが、カンチレバーの破壊につながるほか試料表面へのコンタミネーションの形成とそれに伴うモフォロジー変化や抵抗率の増大も引き起こされることが確認されている。また、カンチレバーの平面走査中は注入電流値が安定せず、定量的なマッピング測定の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
電流注入による試料からのEL発光を確認するために、まずカンチレバーから注入できる電流値を増大させることが要求される。加えて平面走査中の注入電流値を安定させることが必要となる。測定に使用するカンチレバーの曲率半径とばね定数を変更し、サンプル表面との接触面積および触圧を増大させることで課題の解決を図る。
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