研究課題/領域番号 |
21K14559
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分31010:原子力工学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岡 弘 北海道大学, 工学研究院, 助教 (10738967)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 第4世代原子炉 / SMR / 酸化物分散強化 / ODS / メカニカルアロイング / 照射損傷 / 点欠陥 / シンクサイト / ハイエントロピー合金 / 粒子分散 / ボイドスエリング / 高燃焼度用炉心材料 |
研究開始時の研究の概要 |
次世代原子炉の炉心材料が抱える最大の課題は、高温で重度の中性子照射を受け、材料中に欠陥が蓄積することで生じる体積膨張(ボイドスエリング)である。本研究では、照射によるボイドスエリングを大幅に低減することを目指し、優れた材料特性(熱的安定性、高温強度、高疲労強度、耐腐食性)を有するハイエントロピー合金に対し、照射による欠陥の消滅場所となるナノサイズ粒子を材料内部に微細かつ高密度に分散することで、耐ボイドスエリング性を付与した新しい合金を創製する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、照射によるボイドスエリング(体積膨張)を大幅に低減可能な新規粒子分散型ハイエントロピー合金(ODS-HEA)を創製することである。優れた耐照射特性を発現するためには、ナノサイズ粒子を微細、均一かつ高密度に分散させることが必要不可欠である。これまでの研究で、Cr,Fe,Mn,Niの単体元素粉末及びY2O3を遊星型ボールミルにてメカニカルアロイングし、放電プラズマ焼結(SPS)によって固化することにより、FCC単相の母相を有し、直径10~150 nmの微細な粒子が分散したODS-HEAを創製できることがわかった。 また、ODS-HEAは第4世代炉の高燃焼度用炉心材料として使用することを目的とすることから、構造用金属材料として優れたな強度特性と十分な塑性変形性能(伸び)を有する材料の創製が前提となる。そこで、昨年度創製したODS-HEAの引張特性を調査した。その結果、ODS-HEAは1000MPaを超える引張強さ及び数%以上の破断伸びを有することがわかった。組織観察の結果より、ODS-HEAの優れた機械特性は、ナノサイズ粒子による分散強化及び結晶粒微細化強化に由来すると推察された。併せて、作製条件の差異が引張特性に及ぼす影響を調査するため、MA条件(MA雰囲気、ボール粉末重量比、MA停止時間有無)、SPS条件(焼結温度、保持圧力)、試料組成(Ti添加有無)の影響を調査した。その結果、SPS焼結温度が引張特性及び微細組織に大きく影響することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規構造材料開発における必須評価項目である引張特性について、今年度、引張試験を実施し、ODS-HEAの引張特性を評価することができた。また、SPS焼結温度が引張特性及び微細組織に大きく影響することが明らかとなった。すなわち、標準条件より高い温度でSPS焼結した試料においては、母相中のナノ粒子が100nm程度に粗大化し、母相結晶粒も粗大化したことで強度が低下した。一方、低温で焼結した試料は早期破断する結果となった。これは焼結密度が低く、内在していたポアが亀裂発生の起点となったためと推察される。これらの知見の取得により、ODS-HEAの更なる特性向上へ向けた指針を得ることができた。 また、ボイドスエリング抵抗性を定量的に評価するため、先行試作材に対するFe+He+Hトリプルイオン照射試験を行い、照射後組織の微細組織観察を開始した。本研究で創製した材料のボイドスエリング抵抗性を、シミュレーション照射(イオン照射)により実測することは必須項目であり、実験の進捗は予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
トリプルイオン照射試験を行った先行試作材の照射後断面組織観察を進め、ODS-HEAの有する微細結晶粒組織及びナノサイズ分散粒子が損傷組織の発達に及ぼす影響について、アーク溶解にて作製した分散粒子を有しないHEA及び316L鋼と比較することで、考察を進めていく。 現状の試作試料では、分散粒子のサイズや分散状態が不均一であり、作製方法に改善の余地があると考えられる。そこで、微細粒子の分散状態の改善、及びそれに伴う引張特性の改善のため、MA時間の影響及び微量元素であるTi及び酸素の最適添加量を調査するとともに、粒子の分散状態に対するTi及び酸素添加効果のメカニズム解明を図る。これまで、Ti添加により分散粒子は微細になり強度は向上するものの、伸びが著しく低下する結果が得られており、今後、Ti添加量の最適化を図り、粒子の分散状態及び強度ならびに伸びのバランスのとれた材料となるよう、改良する必要があると考えられる。 上記の取り組みにより分散状態が最適化された第2期試作材に対し、イオン照射によるボイドスエリング抵抗性の評価を行う。また、電子線照射その場観察を実施し、ナノ粒子/母相の界面微細構造が照射欠陥形成に及ぼす影響を精査する。
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