研究課題/領域番号 |
21K14577
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分31020:地球資源工学およびエネルギー学関連
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研究機関 | 名古屋大学 (2023) 滋賀県立大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
白木 裕斗 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (50740081)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | カーボンニュートラル / 電力システム / 不確実性 / 確率計画法 / 原子力発電 / 電気自動車 / ヒートポンプ給湯器 / S+3E / 限界発電コスト / 電力システムモデル / 脱炭素社会 / シナリオ分析 |
研究開始時の研究の概要 |
脱炭素社会の実現に向けて、脱炭素電力システムへの移行が社会的に要請されており、移行に必要となる投資、移行した電力システムの姿を定量的に示す必要がある。しかし、現在、電力システムを取り巻く技術・経済状況は急激に変化しており(例えば、再生可能エネルギーや蓄電池のコスト、電化率)、その将来値にも大きな不確実性がある。 本研究は、①網羅的な文献調査により、電力システムに関わるパラメータの将来予測値の幅を整理・見える化すること、②入力変数の確率分布を考慮可能な電力システムモデルにより、不確実性のもとでの頑健な脱炭素電力システム像を示すことを目的とする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、開発した確率論的電力システムモデルを用いて、原子力政策、および、電気自動車(EV)・ヒートポンプ(HP)給湯器の普及の不確実性を考慮したシミュレーションを行った。加えて、将来の電力システムの社会選好の分布を同定するため、質問紙調査を用いたコンジョイント分析を行った。 原子力政策の不確実性を考慮した分析では、最新の文献に基づき発電設備や蓄電池の将来コストを更新した上で、2050年脱炭素を実現する我が国の電源構成を定量化した。確実に原発が新設できると想定したシナリオでは、原発の利用が経済合理的となった一方、原発を利用できない可能性が30%を超える場合、原発の新設・リプレースは選択されず、変動性再生可能エネルギーを蓄電池等で補完する電源構成が経済合理的という結果が示された。 電力需要の不確実性を考慮した分析では、EVやHP給湯器の普及水準が異なる複数の不確実性シナリオの下で、2050年脱炭素を達成する我が国の電源構成を推計した。分析の結果、EVやHP給湯器の普及により、2050年の電力需要量が約10~20%増加することが明らかになった。また、EVやHP給湯器の普及確率が高くなるほど太陽光発電や水素発電が増加すると共に、夜間の電力需要の増加に対応するため、供給安定性が高く、脱炭素電源である水素発電の発電量が上昇することが示された。 将来の電力システムの社会選好に関するコンジョイント分析では、我が国のエネルギー政策の基本方針であるS+3E(安全性、経済性、環境適合性、安定供給性)を対象に、それぞれの属性に対する人々の選好を定量化した。分析の結果、我が国の温室効果ガス削減目標に適合する電力システムを前提とした場合、経済性・安全性・安定供給性の低下に対する選好が有意に低いこと、経済性・安定高級性の相対重要度が高いことなどが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
原子力発電の利用可能性や電気自動車・ヒートポンプ給湯器の普及量を対象として、将来の不確実性を考慮したシミュレーション分析を実施できた。これらのシミュレーションでは、2022年度に提案した"感度解析型の確率計画法"(あえて単一の確率分布を想定することを避け、複数の将来確率シナリオを網羅的に分析する手法)を適用しており、シミュレーションの方法論についても学術的な知見を継続的に蓄積している。また、これらの確率計画法の改善に加えて、入力データのアップデート、および、不確実性分析の対象とするエネルギー機器の拡張を実施できている。これらの研究成果については、学会で発表しており、学術論文の投稿に向けた準備も進めている。 加えて、エネルギー政策の基本方針であるS+3E(安全性、経済性、環境適合性、安定供給性)に対する人々の選好を定量化するコンジョイント分析を実施するなど、当初計画以上の研究を実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度までに、当初の計画通り、将来パラメータ分布の同定、および、不確実性を考慮したシミュレーション分析を実施できた。加えて、電力システムに関する人々の社会選好を定量化するコンジョイント分析を実施できた。2024年度はこれらの研究成果を学術論文化し、投稿する。2022年度以降に提案した"感度解析型の確率計画法"について、論理的妥当性・有用性があることを示すため、リアルオプション分析等の関連する学術論文を精査することで、関連する学術領域における既存の知見を踏まえたフレームワークとして位置づける。
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