研究課題/領域番号 |
21K14591
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
浦谷 浩輝 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (50897296)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 励起状態 / 半導体 / ダイナミクス / 量子化学 / 計算化学 |
研究開始時の研究の概要 |
励起状態の物質のダイナミクスは基礎応用両面から重要な対象である。半導体材料等においては、励起に伴う電子状態変化が数ナノメートル程度の空間的範囲にわたって広がる非局所的励起状態がしばしばみられる。 励起状態の計算化学的シミュレーションにおいては、計算に要する時間が系の大きさに対して急激に増大するという性質のため、非局所的励起状態を扱うことは困難であった。 本研究では、系の大きさに対する計算時間の増大を抑えた励起状態ダイナミクス計算手法を開発し、非局所的励起状態ダイナミクスのシミュレーションを現実的な時間で実行可能とすることを目指す。また、当該手法を半導体の動作機構解明や材料設計に応用する。
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研究実績の概要 |
本年度は、前年度開発したpatchwork-approximation (PA) based Ehrenfest法を実在系に応用し、手法の概念実証を行うとともに、対象とした現象の微視的メカニズムに関する考察を行った。 具体的な対象として、有機太陽電池における電荷移動メカニズムをPA-based Ehrenfest法により調べた。典型的なドナーpoly(3-hexylthiophene-2,5-diyl)(P3HT)及びアクセプター[6,6]-phenyl-C61-butyric acid methyl ester(PCBM)の界面のナノスケール構造モデルを作成し、PA-based Ehrenfest法により光励起状態ダイナミクスを追跡した。これにより、電荷移動に構造(核)のダイナミクスが重要な役割を果たすこと、構造ダイナミクスを単なる熱揺らぎとみなすのではなく電子状態依存性の顕な取り込みが重要であること、電荷の移動経路が界面の構造乱れに強く依存することなどを明らかにした。 また、有機電荷移動錯体結晶tetrathiafuluvalene-p-chloranil(TTF-CA)における光誘起相転移現象にも本手法を適用した。TTF-CAは、構成分子が電気的にほぼ中性である中性相と、TTFからCAへの電子移動を伴うイオン相の2つの状態を持つ物質であり、光照射によりこれらが相互に転移することが知られる。本研究では、TTF-CA結晶を再現した切り出しモデルに対するPA-based Ehrenfestシミュレーションにより、光照射後の分子電荷及び構造の時間変化を追跡した。結果に基づき、TTF-CAの光誘起相転移における振電相互作用の役割や、赤外励起による中性→イオン相転移の実現可能性等を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、本年度は典型的な半導体材料(SiやCdTe及びこれらで構成される量子ドット等を想定)にPA-based Ehrenfest法を適用し、計算手法及び結果解析手法の概念実証を行う予定であった。実際に計算対象とした有機太陽電池(P3HT/PCBM)は、当初の計画で想定した対象系とは異なるものではあるが、吸収波長や電荷移動の時間スケールなどを実験値と比較することにより、本計算手法の有効性と限界が確かめられた。また、結果解析にあたっては、構造ダイナミクスの電子状態依存性を含めた場合と無視した場合を比較する、分子軌道とその構成要素の重みに着目するなど、本計算手法ならではの解析アプローチにより計算結果を物理化学的に意味づけられることを示した。したがって、手法の概念実証という目的はおおむね達せられたといえる。これに加え、当初は予定していなかった、TTF-CAにおける光誘起相転移に関する応用も展開することができた。 以上より、当初の計画はほぼ達せられ、計画には含まれていなかった成果も得られたことから、本研究は当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発したPA-based Ehrenfest法は、原理的には幅広い系に応用することができる。 今後は、P3HT/PCBMのような典型的な系だけでなく、より新奇性の高い系にも適用範囲を広げ、物質設計への貢献を目指す。具体的な対象系としては、非フラーレン型アクセプターに基づく有機太陽電池等を想定している。 また、PA-based Ehrenfest法では、核は平均場ポテンシャルのもと運動する古典的な粒子とみなされる。このため、核波束の分岐や、電子状態のデコヒーレンスなどを正しく記述できない欠点がある。こうした要素が重要となる系・現象にも適用範囲を広げるべく、核の波動関数をガウス波束で展開してそのダイナミクスを扱う各種手法(variational multiconfigurational Gaussian法、ab initio multiple spawning法など)のアイデアを取り入れることで、核の量子性を考慮した手法へと拡張する。
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