研究課題/領域番号 |
21K14625
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
荒巻 吉孝 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70779678)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 光触媒 / 一電子還元 / 水素原子引き抜き反応 / ブレンステッド酸触媒 / ラジカルーラジカルカップリング反応 / 水素原子引き抜き / 水素原子移動反応 / ラジカル |
研究開始時の研究の概要 |
既存の光触媒分子のほとんどは有機ELなどに用いられてきた分子、すなわちすでに光励起状態の挙動が明らかにされている分子を光触媒へと転用したものである。これに対して本研究では触媒サイクルの素反応過程での触媒の振る舞いを念頭に光触媒分子を機能からボトムアップ的に設計するという新たなアプローチを提案する。このような触媒設計指針に基づき合成した分子の光触媒として機能の実証により新たな学理構築を行い、合成化学的な応用面からも高価な遷移金属を用いずに複雑な立体構造をもつ分子を安価な原料から短工程にて光エネルギーを駆動力として合成することが可能になる。
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研究実績の概要 |
前年度に合成した新奇ボリルチオフェノール触媒のブレンステッド酸触媒としての機能を新たに発見し、すでに報告していた一電子還元剤、水素原子引抜き触媒としての機能と合わせたて三触媒機能触媒としての反応開発を行った。その結果、ケトンとベンジリックアルコールもしくはベンジリックアミンを水素原子引抜き機能により、ケトンを一電子還元とプロトン化により活性化し、生成する2つの異なるラジカル-ラジカルカップリングによるかさ高い1,2-ジオールおよび1,2-アミノアルコール誘導体の合成法を見出した。これは、3つの触媒機能を単一の反応系において巧みに利用したという点で学術的に高い意義があるのに加え、触媒反応自体も従来合成が難しかった立体的に混み合った分子群を100%の原子効率かつ高い触媒回転頻度で与え、触媒以外の添加物も必要としないグリーンな反応であることから合成反応としての価値も高い。この成果は日本化学会第103春季年会と第53回中部化学関係学協会支部連合大会、および2件の国内シンポジウムにおいて発表を行い、2023年度の前期中に論文として投稿する予定である。 加えて、水素原子引抜き能の向上と還元力の向上による基質適用範囲の拡大をねらい、ボリルチオフェノール触媒構造をベースとした、触媒の機能改変と改良をに取り組んだ。現状は新しい触媒の開発までには至っていないが、触媒の機能発現に重要な励起状態における構造・物性相関を得るに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書中に提案したボリルチオフェノール分子の基礎物性を明らかにし、その分子特性を巧みに活かした新規触媒反応の開発に成功した。これは研究計画書通りに順調に進捗しているといえる。一方で、硫黄以外の中心元素を有するより高い水素原子引抜き能をもつと期待してる触媒分子の開発については未だに達成できていない。しかし、いくつかのモデル分子の合成とその機能評価の過程において、高い水素原子引き抜き能を有する分子骨格上の特徴が浮き彫りになりつつある。以上、2つの観点から、上記の評価区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
本触媒設計の学理として昇華させるべく、新規触媒分子の開発とそれを用いた新規反応開発を行う予定である。本年度の研究により高い水素原子引き抜き能を有する分子構造要件についての仮説が浮かび上がったため、その妥当性を検証するためのモデル分子を合成し、触媒としての機能開拓を目指す。 また、研究計画書に示したキラルブレンステッド塩基の共役酸であるカチオンとの恊働触媒によるラジカル反応の立体制御に関しては、当初想定したボリルチオフェノール触媒が共存させる予定であった塩基に対して非常に不安定で触媒自身の分解が進行することが明らかとなったため、進捗していない。この分子の不安定性はホウ素置換基の塩基に対する不安定性に起因するものと想定しているため、アクセプター部位を塩基耐性の高い置換基とすることでこの問題を解決し、イオン対触媒による立体選択的な分子変換反応の開発に取り組む予定である。
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