研究課題/領域番号 |
21K14634
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
齋藤 弘明 日本大学, 薬学部, 講師 (30385976)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | カルベン / 炭素ー窒素結合形成 / α-アミノ酸 / 環境調和型化学反応 / アンモニア / カルベン挿入 / 非天然アミノ酸 / ペプチド / カルベン挿入反応 / アミノ酸合成 / 有機分子触媒 / 遷移金属触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
アミノ酸は生体を構成するペプチドやタンパク質の構成成分であり、効率的な合成法が望まれている。高い反応性をもつカルベン炭素と窒素原子を結合することでアミノ酸類を得ることができるため研究が展開されており、塩基性度が低減されたアミンの利用が知られている。しかし、既法ではアミンの適用範囲が限定的であり、ときにアミノ基部分の保護や脱保護も必要となる。研究の目的は、これまで顧みられることがなかった安価でシンプルな構造をもつアンモニアを広範なカルベン基質に結合させる方法論の確立である。本法の開発により、アミノ酸合成の終盤におけるアミノ基の導入が可能となり合成化学上・創薬化学上有用と考えられる。
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研究実績の概要 |
アンモニアを反応剤とするカルベンのN-H挿入反応の開発を目的として研究を行っている。カルベンは高い反応性をもつ炭素種として古くから知られており、生物活性物質合成における反応中間体あるいは化学反応を加速する触媒のリガンドとしても利用されている。 私は、この高反応性カルベンを窒素-水素(N-H)原子間に挿入させることにより、新たに炭素-窒素(C-N)結合を立体選択的に構築する研究を展開してきた。当該年度には、触媒として組み込んだ中心金属種(ロジウム、コバルト、銅、鉄、亜鉛、ルテニウム錯体)の違いによるN-H挿入反応への影響を検討した。この際、窒素源として、有機溶媒に溶解させたアンモニア、アンモニア水およびアンモニアの化学的な等価体を用いることとした。 アンモニア水を反応剤とするとき、反応溶媒、触媒また反応温度を含めて種々検討を重ねたものの、目的とするN-H挿入体は現在までに得られていない。これは、反応を進めるための加熱条件において、アンモニアが溶液中からの揮発を避けることができず、また水分子とカルベンとの反応が一部避けることができないためと推察された。そのため今後、極性基を組み込んだ高極性な金属錯体の利用による、低温下で進行させることが可能なカルベン挿入反応を検討することとする。 一方、有機溶媒に溶解させた状態のアンモニアを用いるとき収率は5%に留まるものの鉄触媒を用いるとき、目的とするN-H挿入体が生成することがわかった。次年度以降収率の改善のために、引き続きさらに良い反応系の開発研究を継続する。 以上のような結果を受け、反応系中での加水分解により第一級アミンに変換することができる化学的等価体を複数化合物選択して反応を実施したところ22%の収率で第一級アミン構造をもつN-H挿入体を形式的に合成することに成功した。本反応は、無触媒下で進めることも可能であり、今後精査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フェニルジアゾ酢酸エステルをカルベン前駆体としたN-H挿入反応を検討したところ、アンモニア分子を用いるN-H挿入反応における収率は最高でも5%に留まっている。代替法としてアンモニア等価体構造をもつ分子をカルベンのN-H挿入反応に活用することにより、遊離カルベンを中間体とする遷移金属触媒を使用しない条件下においても、収率が20%を超えるまでに向上することを見出した。本反応は、反応系中でアミノ基を直接的に導入にすることができることから、形式的なカルベンの直接アミノ化となるものであり、無触媒下で実施できることは興味深い反応であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
アンモニア水中での検証を行うため、継続して水溶性ロジウム(II)錯体触媒の調製を行う。不斉構造をもつ糖アナログを架橋配位子として組み込んだ新規ロジウム(II)錯体を用いてカルベン挿入反応を実施し、アンモニアのN-H挿入反応をアンモニア水中で実施する可能性を追求する。 これまでに見出したアンモニア等価体の構造の最適化を行う。アニリン窒素原子へのN- N-挿入反応に成功し、これまで検討を進めてきたが窒素原子の塩基性度の度合いに着目してアンモニア等価体の構造をチューニングすることにより化学収率の向上を目指したい。
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