研究課題/領域番号 |
21K14669
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分35010:高分子化学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
清田 小織 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 技術職員 (20376883)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 共役トリエン / ルテニウム錯体 / ADA型分子 / 自発分極 / DAポリマー / π共役高分子 / 付加重合 / ハロゲンフリー |
研究開始時の研究の概要 |
DAポリマーとは電子豊富な芳香族(Doner)と電子不足な芳香族(Acceptor)が交互に結合された高分子であり、自発的な電子移動が共役系全体に広がるため、導電性高分子や太陽電池材料として期待されている。しかし、従来のDAポリマーの合成法は全てハロゲン化合物を用いた縮重合であるため、形成された結合と同じ数のハロゲン塩や金属ハロゲン化物が副生することになり、これらの混入が問題となっていた。そこで、非ハロゲンモノマーを用いた水素移動型付加共重合法を新規開発し、ハロゲンやその塩の混入がなく、構造欠陥の少ない均一なポリマーの合成を実現する。
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研究実績の概要 |
DAポリマーは電子豊富な芳香族(Doner)と電子不足な芳香族(Acceptor)が交互に結合された高分子であり、添加物(ドーパント)の添加なしに自発的な電子移動が共役系全体に広がるため、導電性高分子や太陽電池材料として期待されている。しかし、現在のDAポリマーの合成法は全てハロゲン化合物を用いた重縮合であるため、形成された結合と同じ物質量のハロゲン塩や金属ハロゲン化物が副生することになり、これらの混入が問題となっていた。そこで、本研究の目的は付加重合によるDAポリマーの合成をはじめて実現することを目的とした。 申請者らは形式的に共役ジエンの末端炭素―水素結合にアルキンがsyn選択的に付加する0価ルテニウム錯体を用いた新しい触媒反応を見出しており、2021年度にはこの触媒反応により共役トリエン鎖で架橋された DA型二量体およびADA型三量体の合成と物性測定を行った。2022年度には、DAD型三量体の合成と物性測定と付加重合反応を行った。ドナーとして2位にアルキニル基を導入したチオフェンと、アクセプターとして2,6位にジエニル基を導入したピリジンを合成し、ルテニウム錯体を用いて反応を行ったところ、DAD型三量体が生成した。また、ADAとDAD型三量体の物性評価を行い比較検討したところ、自発分極よりも平面性の向上によりADA型三量体の極大波長が長波長シフトしていることが確認された。また、反応中に触媒が失活しており、その機構を解明し対策を講じた。含酸素ビシクロ環構造をもつoxa-bndを配位子としたルテニウム錯体が良好な触媒となることを発見し、この錯体を用いて2,5位にジエニル基を有するピリジンとジアルキニルチオフェンの反応を予備的に行ったところ、付加重合反応の進行が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に、Donor-Acceptor-Donor型 (DAD 型)分子の構築を目的として行った2-ブタジエニルチオフェンと 2,6-ジ(ヘキシン-1-イル)ピリジンとの反応が進行しなかった事実から、本触媒反応ではジエン側にπ電子欠乏性芳香族複素環、アルキン側にπ電子過剰芳香族複素環が必要であることが明らかとなったため、2022年度は、2位にアルキニル基を有するチオフェンと 2,6位にジエニル基を有するピリジンとの反応を[Ru(naphthalene)(1,5-cod)]を触媒(20 mol%)として70度で6時間行ったところ73%の収率でピリジル骨格を中心とした、Donor-Acceptor-Donor型 (DAD 型)三量体の合成に成功した。また、DA型でない三環式共役トリエニル架橋型芳香族分子を合成し、ADAとDAD型三量体とともに物性評価を紫外可視吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよびサイクリックボルタンメトリー測定により行い比較検討したところ、自発分極よりも5員チオフェン環の平面性の向上により中心にチオフェン環を有する三環式芳香族分子の極大波長が長波長シフトしていることが確認された。また、機構解明により、シクロオクタジエン配位子から、ルテニウムに配位したジエンへのプロトン移動により触媒が不活化していることが確認されたため、触媒検討を行い、配位子からプロトン移動しにくいビシクロ構造の9-oxabicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene (oxa-bnd)を配位子とするルテニウム錯体が良好な触媒であることを明らかとした。そこで、2,5位にジエニル基を有するピリジンを合成し、ジアルキニルチオフェンと、oxa-bndを配位子とするルテニウム錯体を触媒に用いて反応を行ったところ、室温で付加重合反応が進行することが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度までに二量体および三量体のDA分子を合成し、触媒の失活経路の解明により重合が可能となったことを受けて、2023年度は付加重合によるDA型高分子の合成を行う。[Ru(naphthalene)(1,5-cod)]を触媒とする反応系の主な失活過程は、シクロオクタジエンの脱プロトン化によりシクロオクタジエニル配位子となることから、環状ジエン配位子からの脱プロトン化が起こりにくいビシクロ構造のoxa-bnd (9-オキサビシクロノナジエン)を配位子に持つルテニウム錯体を触媒としたところ、2,5-ジブタジエニルピリジンと2,4-ジ(ヘキシン-1-イル)チオフェンとの付加重合反応がベンゼン中、室温で進行することが確認された。そこで、[Ru(naphthalene)(oxa-bnd)]を触媒とした重合条件の最適化により、初の付加重合による各種DAポリマーを合成する。また、重合度の向上に伴いポリマーの溶解性が問題となる可能性があるが、長鎖アルキル基の導入により、π共役構造に必須である平面性が高い一方で、溶解性も高いポリマーを合成し、成膜性の向上を図る。合成したポリマーについては紫外可視吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよび電気化学測定等により物性評価を行う。また、これまでに合成したトリエン架橋芳香族分子については、自発分極の寄与が少ないため、自発分極の寄与を向上させるために、ドナーとしてより電子豊富で平面性の高いチエノチオフェン骨格等、アクセプターとしてより電子不足なフタルイミド誘導体等を導入した基質を合成し、それらを用いて各種DAポリマーの合成を行い、物性評価を行う。
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