研究課題/領域番号 |
21K14679
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 岐阜大学 (2022) 東京大学 (2021) |
研究代表者 |
橋本 慧 岐阜大学, 工学部, 助教 (20888276)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 高強度高分子電解質 / 伸長誘起結晶化 / スライドリング効果 / 均一網目 / イオンゲル / 電解質 / 強靭化 / 均一網目効果 / 過渡的架橋点 |
研究開始時の研究の概要 |
リチウムイオン二次電池の課題の一つである安全性・信頼性の向上を狙い、不燃・不揮発な高分子系電解質の強靭化を実現することを目的とする。強靭化の手法として、高分子均一網目に部分的な結晶化による過渡的な架橋点を導入するという手法を用いる。以上の効果について、物性評価と小角X線散乱・結晶構造解析といった構造化学的手法の組み合わせで明らかにし、高強度な高分子系電気化学材料の創成と、蓄電デバイスへの適用に繋げる。
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研究実績の概要 |
本研究では、ウェアラブルデバイスへの適用を目指した強靭かつ延伸可能な高分子電解質材料の開発を目的としている。前年度は一部計画を変更し、高分子鎖上をスライド可能な動的な架橋点を有するスライドリング(SR)網目とLi塩からなる強靭な電解質を開発した。この材料に対し研究を進め、論文作成(投稿中)を行った。X線散乱・AFM等の構造解析手法と物性評価の組み合わせにより、以下が明らかとなった。(1)延伸した際に高分子鎖が配向し結晶化する伸長誘起結晶化が起こり、亀裂進展への耐性を生ずることが優れた破断エネルギー(>100 MJ/m3)に繋がっている。(2)架橋点として用いた鎖上を移動可能なシクロデキストリンが電解質中で相分離し、硬い連続相のドメインを形成しており、それが高いヤング率(>10 MPa)に寄与している。これらの機械特性はウェアラブルデバイスの外装として用いられる一般的なエラストマーよりも優れており、ここまで高い破断エネルギー、ヤング率を両立し、イオン伝導率も高い高分子固体電解質はこれまでに報告されておらず、本検討が初めての報告となる。 加えて、溶媒を変え、Li塩よりも溶媒和力が弱いイオン液体を用いてSRイオンゲルを作製した。SRイオンゲルにおいても伸長誘起結晶化が観測され、高い破断エネルギーを示した。現在、中性子散乱を中心としてその構造解析を進めている。 また、当初の目的であった、4分岐均一高分子網目の伸長誘起結晶を利用した強靭化にも進展があった。(1)分岐間の分子量(2)高分子の濃度の両者を一定以上にすることで、4分岐の高分子網目を使っても高分子鎖が十分に配向し、伸長誘起結晶を形成することが分かった。以前報告した伸長誘起結晶を形成しない4分岐網目の高分子電解質よりも遥かに高い破断延伸倍率と破断応力を示すことが明らかになりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、イオン伝導性に代表される電解質としての性能を損なわずに高強度な高分子電解質を開発することにある。Li塩とSR網目からなる高分子電解質の開発に引き続き、構造解析手法を用いて、その強靭化メカニズムを理解する段階にまで進むことができた。また、その知見と知識の蓄積を利用して、より一般的な高分子網目に近い、4分岐の均一網目に対しても伸長誘起結晶化メカニズムを用いた強靭化を実現することができた。この結果は、より多くの材料に対して同じメカニズムを利用した強靭化が可能であることを示唆しており、より詳細な条件および機構の解明が出来ればその波及効果は大きいと考えられる。以上から、当初の予定以上に進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現状でも予定した成果が出つつあり、最後の一年については現在開発された優れた物性を示す材料について、強靭化機構の理解とその一般化を目標にして研究を推進する。具体的には、イオンゲル材料におけるメカニズム解明、および均一網目における伸長誘起結晶化条件の明確化をターゲットとして、変形中における構造変化をX線中性子散乱、コンピューターシミュレーション、ラマン散乱等の解析手法で解析し、力学等のマクロな物性と紐づけることを目標として、研究を進める。
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