研究課題/領域番号 |
21K14688
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
秦 裕樹 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 防衛医学研究センター 医療工学研究部門, 助教 (30872981)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | セルロース / 自己組織化 / ナノ構造 / 医用材料 |
研究開始時の研究の概要 |
布をはじめとする汎用セルロース材料は一般にナノ構造をもたない。本研究では、セルロース素材をボトムアップ的にナノ構造化する科学技術の開拓を目指す。具体的には、天然由来セルロース原料を加水分解して短鎖セルロースを生成し、それをセルロース素材の存在下で自己組織化させることで、ナノ構造化セルロース材料の構築を図る。さらに、ボトムアップ構築したナノ構造化セルロースに特徴的な機能を見出し、医用材料としての応用可能性を探索する。
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研究実績の概要 |
令和3年度は、セルロースの溶媒かつ加水分解触媒であるリン酸を適切に用いることで、セルロース素材をボトムアップ的にナノ構造化できることを見出した。本年度は、まずナノ構造の制御を検討した。リン酸によるろ紙の溶解・加水分解を45 °Cで20時間行った場合には、重合度が8前後のセロオリゴ糖が生成され、その後の自己集合化によりナノスパイク構造をマイクロ繊維表面で形成した。一方で、温度を25 °Cに低下させた場合には、加水分解反応によるセロオリゴ糖の生成がほとんど起こらず、長鎖のセルロースのままであった。さらに貧溶媒である水を添加することで自己集合化を誘起した結果、長鎖セルロースがマイクロ繊維の間隙でナノ繊維ネットワーク構造を形成した。したがって、ナノスパイク構造の形成には、分子量が低いオリゴマーであることが必須であることがわかった。長鎖セルロースは溶解性が低いため水添加時に溶液のバルクで均一核生成するのに対して、セロオリゴ糖は溶解性が比較的高いために均一核生成が起こりづらく、マイクロ繊維の表面で不均一核生成してナノスパイク構造を形成するものと推察される。続いて、医用材料への応用可能性を探るため、銀ナノ粒子との複合化を検討した。当初は予め調製された銀ナノ粒子を複合化する予定であったが、種々検討の結果、興味深いことにセロオリゴ糖ナノスパイクが銀イオンを還元する作用があり、結果として銀ナノ粒子を合成できることを見出した。具体的には、ナノスパイク化セルロースを硝酸銀水溶液に浸漬させた状態で加熱処理を行うだけで、粒径の比較的揃った銀ナノ粒子が合成された。解析の結果、重合度の比較的低いセロオリゴ糖の還元末端が銀イオンを還元していることが示唆された。得られた銀ナノ粒子複合材料は高い殺菌活性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通りナノ構造を制御することに加え、令和5年度に計画していた銀ナノ粒子との複合化を達成した。特筆すべきことに、計画段階では予め調製された銀ナノ粒子を複合化に用いる予定であったが、セロオリゴ糖ナノスパイクが銀ナノ粒子を合成する作用があることが明らかとなった。以上の成果からこのように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ろ紙のみならず、種々のセルロース材料に対してナノスパイク構造を修飾できる方法を確立する。とりわけ、汎用的なセルロース系医用材料である綿ガーゼのナノスパイク化を目指す。さらに、医用材料としての応用において重要となる微生物の付着挙動について、ナノスパイク化セルロースと通常のセルロース材料を比較検討する。
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