研究課題/領域番号 |
21K14694
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 智也 京都大学, 化学研究所, 助教 (90850371)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | ペロブスカイト / 太陽電池 / 単分子材料 / 電子回収材料 / ロダニン / 有機半導体 / 界面化学 |
研究開始時の研究の概要 |
スズ系ペロブスカイト太陽電池は環境負荷の低減の観点から注目を集めているが、その光電変換効率は鉛系材料を用いたものよりも低くとどまっている。本研究では、低い光電変換特性の要因として、電荷輸送材料の移動度が十分でないことと、分子レベルでのペロブスカイト層との界面構造制御法が無いことに着目し、①嵩高いコア骨格と平面性の高い末端骨格を組み合わせた2次元拡張π共役分子を開発し、電荷輸送特性を向上する。さらに、②ペロブスカイト層に対する「アンカー部位」としてアルキルアンモニウム基を含む分子を用いて、ペロブスカイト層―電荷輸送層の分子レベルでの界面制御に取り組む。
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研究実績の概要 |
ペロブスカイト太陽電池は、塗布で作製可能な次世代太陽電池として注目を集めている。ペロブスカイト半導体から電子を取り出す電子回収層(n型半導体材料)には、酸化チタンや酸化スズなどの金属酸化物が一般的に用いられているが、低温プロセスによる成膜や素子の耐久性の観点から、有機電子回収材料の開発が求められている。近年、正孔回収層(p型半導体材料)として、有機単分子層を用いることで高い太陽電池特性と耐久性が得られることがわかってきている。そこで本研究では、単分子層で用いる有機電子回収材料の開発に取り組んだ。 高い電子受容性をもつ骨格としてロダニンおよびチアゾリジンジオン骨格に着目し、これらをイサチン骨格と縮合させた化合物を標的化合物として合成を行った。これらの化合物の窒素原子上には、ITOなどの透明電極への吸着基として、ホスホン酸基あるいはカルボン酸基を導入した。 電気化学測定から、合成した化合物はいずれもペロブスカイト半導体から電子を受け取ることのできる適切なLUMO準位をもつことがわかった。実際に、これらの化合物を単分子電子回収材料として用いてペロブスカイト太陽電池を作製したところ、10~13%程度の光電変換効率が得られ、いずれの場合も電子回収材料を用いなかった場合(7.9%)より高い特性を示すことがわかった。 一方、さらなる素子特性の向上のためには、これらの化合物がどのような膜を形成しているのかを分析する必要がある。今後は被覆率や分子配向の評価を行いながら、成膜法の最適化を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、ロダニンおよびチアゾリジンジオン骨格として用いた一連の単分子電子回収材料の合成および基礎物性評価を行った。また、これらの材料を用いたペロブスカイト太陽電池の作製にも取り組んだ。 具体的には、ロダニンおよびチアゾリジンジオンのカリウム塩と、エステル保護された吸着基(ホスホン酸およびカルボン酸)をもつ臭化アルキルとの反応により吸着基を導入した。ピペリジンを触媒として用いてイサチンとのクネーフォナーゲル縮合を行い、エステルの脱保護を行うことで、一連の標的化合物を合成できることがわかった。 電気化学測定と紫外・可視吸収スペクトル測定から、合成した化合物のLUMO準位は-3.9 eV ~ -4.2 eV程度、HOMO準位は-6.3eV ~ -6.4 eV程度と見積もられ、ペロブスカイト半導体(伝導帯準位:~ -4.0 eV、価電子帯準位:~ -5.6 eV)から電子を受け取り正孔をブロックすることのできる適切な電子準位をもつことがわかった。 そこで、実際に、これらの化合物を単分子電子回収材料として用いてペロブスカイト太陽電池の作製を行った。予備的な結果ではあるが、10~13%程度の光電変換効率が得られ、いずれの場合も電子回収材料を用いなかった場合(7.9%)より高い特性を示すことがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発した4種類の単分子材料はいずれも電子回収層として機能し、初期検討としては比較的良好な10~13%程度の光電変換効率が得られることがわかった。さらなる素子特性の向上のためには、これらの化合物がどのような膜を形成しているのかを分析する必要があると考えられる。 そこで、薄膜の電気化学測定やX線光電子分光による被覆率の評価や、紫外光電子分光と準安定原子電子分光の組み合わせによる分子配向の評価を行い、単分子膜の構造特性を明らかにする。それをもとに単分子材料の成膜法(溶液の濃度、スピンコートorディップコート、アニール条件など)の最適化を行う予定である。
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