研究課題/領域番号 |
21K14698
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
佐藤 友哉 東京理科大学, 理工学部物理学科, 助教 (80836370)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 絶縁性高分子 / 導電性高分子 / 高分子薄膜 / コンフォメーション変化 / キャリア輸送特性 / 電子状態 / 電子トラップ |
研究開始時の研究の概要 |
大量の絶縁性高分子を用いて導電性高分子を希釈し薄膜を形成すると、導電性高分子の電子トラップが減少し電子輸送特性が改善されることが報告されている。しかしながら、希釈薄膜中で大部分を占めている絶縁性高分子が導電性高分子の電子輸送特性の改善に対しどのような役割を担っているのかについては未解明である。本研究では、導電性高分子だけでなく絶縁性高分子および希釈薄膜の電子状態や希釈度合による膜構造の変化、希釈薄膜を用いたデバイスの電気特性などを包括的に検討することで希釈薄膜中で絶縁性高分子が担う役割を明らかにする。さらに希釈に用いる絶縁性高分子の自由度についての検討することで希釈法の最適条件の探索も行う。
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研究実績の概要 |
2022年度はポリフルオレン(PFO)とポリスチレン(PS)を混合することによって形成されるPFOのβ相に関して、両者の混合比率とβ相の形成量の関係について検討を進めた。これまでβ相形成は吸収スペクトルの変化から評価されてきたが、従来法ではPFOの凝集による変化もβ相として評価されてしまっていた。そこで、従来法による評価に加え、PFOの凝集とβ相それぞれに由来する吸収ピークの強度比から両者を区別することで、定量的なβ相形成量の評価を試みた。PFO:PS混合膜に含まれるPSの割合を10~90%となるように調整した膜の吸収スペクトルの変化から評価した結果、PSの割合が70%の時に混合膜に含まれるPFOのコンフォメーション変化量が最大となり、そのうちの20%程度がβ相を形成していることが明らかとなった。 β相の形成量と電気特性との相関も検証するために、混合比率を変えた複数のPFO:PS混合膜を用いて電子オンリー素子(EOD)を作製し、電流-電圧測定を行った。その結果、①β相は形成されていなくてもPSとの混合によってPFOのコンフォメーションに変化が生じれば電流密度が増加すること、②β相の形成量と電流密度の増加との間に明らかな正の相関があること、③β相の形成量が最大となる条件で製膜した素子では完全なアモルファス膜を用いた素子に比べ電流密度が3桁以上増加すること、などの結果が得られた。 ほかの材料とPFOとを混合した場合のβ相形成についての検証も実施した。ポリエチレン(PE)やポリ(メタクリ酸メチル)(PMMA)などの高分子、直鎖状アルカン、フラーレン誘導体(PCBM)、金属フタロシアニンなど多種多様な材料を取り上げ、吸収スペクトルの変化から評価した結果、直鎖状アルカンと混合することでβ相に由来する吸収ピークがPSとの混合させた場合よりも強く現れることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、新たな評価方法を考案することで混合に伴うPFOのコンフォメーションの変化量、さらにはβ相の形成量を定量的に評価できるようになった。これにより、電流-電圧測定結果と照らし合わせることで、推定したβ相の形成量とPFO:PS混合膜の電気特性との相関についても確認できつつある。また、PFO:PS混合膜の電荷移動度やトラップ密度などを評価するために整備を進めていたCELIV装置の立ち上げが完了し、実際に素子を作製し電荷移動度の評価も進めている。一方で、電子状態の評価については、試料帯電の影響を改善すべく試行錯誤を続けている。PFOと混合する材料を変更した場合については、予定を前倒しして検討を始めており、β相形成の有無についてのみではあるが一定のデータは収集できつつある。 以上のことから電子状態評価は試行錯誤を続けているものの、β相形成と電気特性との相関やPFOと混合する材料の自由度に関する検討などは順調に進められていることなどを総合的に勘案し、全体の進捗状況としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、PFO:PS混合系に関しては立ち上げが完了したCELIV装置を活用して電荷移動度やトラップ密度とβ相の形成量の相関についての検証に引き続き取り組み、最終的に絶縁性高分子との混合がPFOの電荷輸送特性に与える影響について議論する。電子状態評価については、PSとの混合膜において試料帯電の影響が顕著なので、測定用薄膜の作製条件を改めて検討しなおすことで薄膜化を図り、PSとの混合がPFOの電子状態にどのような影響を及ぼしているのかについて検討する。PFOと混合する材料を変更した場合については、β相の形成量を最大化するための材料探索に引き続き取り組む。さらに、現在までに得られている結果と合わせて混合する材料の選択性や最適条件について検討する。
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