研究課題/領域番号 |
21K14723
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
稲垣 泰一 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (00895766)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 化学蓄熱材 / 固気界面反応 / 分子シミュレーション / 酸化マグネシウム / 結晶核生成 / モンテカルロ法 / 分子動力学法 / レアイベント / 化学蓄熱 / 分光計算 / 固気化学反応 / 律速過程 |
研究開始時の研究の概要 |
固気化学反応の反応熱を利用して熱を蓄える化学蓄熱は、その反応性の低さが実用化への課題となっている。合理的に反応性を高めていくには、律速過程を分子レベルで理解する必要がある。本研究では、新規な分子シミュレーション技術の開発と応用によって化学蓄熱の代表的な固気化学反応である酸化マグネシウムの水和と水酸化マグネシウムの脱水の構造変化および律速過程を分子レベルで解明し、反応性を高める実用的方法の提案を目指す。本研究の成功は、化学蓄熱の動作原理の分子論的な理解を与え実用化に貢献するだけでなく、物理化学的理解が不十分な固体構造の変化が絡む化学反応を解明するための新しい研究アプローチを創出する。
|
研究実績の概要 |
本年度は昨年度と同様に酸化マグネシウム(MgO)の水和反応の分子シミュレーションを実施し、結果の解析を行った。シミュレーション時間の拡大により、ポテンシャルスケーリングの影響による系の組成の変化はほぼ収束し、系中の水分子の2/3は解離して水酸基となった。その水酸基は界面/表面に存在し、脱離Mgと鎖を形成していた。この鎖の中で水酸化マグネシウムの構造が出現するには、Mgと水酸基がMgO格子に従わずに整列する必要があることがわかったが、この局所構造はMgO格子の静電ポテンシャルのため、必ずしも安定であるとは限らない。よって、核成長としては、より多くの水分子に囲まれた環境で起こることが考えられ、そのような系におけるシミュレーションの検討が必要である。また、モデルポテンシャル(ReaxFF)での水和過程のエネルギー変化はポテンシャルスケーリングのMDのために必ずしも単調に減少するわけではないが、反応物よりも安定な水酸化マグネシウム核を持った配置は多く存在していた。よりエネルギー精度の高いDFTB法を用いてもこれは変わらなかったので、上記のReaxFFでの解析はある程度妥当であると言える。 また、モンテカルロ法における提案配置の新規生成法の検討も引き続き行った。ポテンシャルスケーリングによって系に吸収されたエネルギーを放出するために、ハミルトニアンダイナミクスに基づくNose-Poincareの方法をさらに検討した。エネルギーの放出は良く行われたが、今度は逆に系が過剰に安定化された配置の出現が特徴的になり、そのような配置ばかりが採択される結果となった。このような配置出現のバイアスによって、正しい正準アンサンブルの構築は熱浴の導入だけでは困難であることが判明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DFTB法の検証やモンテカルロ法の改良の試行錯誤に多くの時間を費やしたため、当初の計画で予定していた水酸化マグネシウムの脱水反応への取り掛かりが遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、MgO表面で得られたMgと水酸基の鎖を水中に置くことにより、水酸化マグネシウムの核成長が起こるかどうかを検証する。もし、そのような環境で水酸化マグネシウム核が成長するようならば、水蒸気は水酸化マグネシウムの水酸基を供給する源としてだけでなく、核成長の場を与える環境としても重要な役割を果たしていることになる。その後、DFTB計算の結果も踏まえて律速過程を解析し、本研究の結論を得る。また、その結果を以て研究発表および論文投稿を行う。加えて、水酸化マグネシウムの脱水反応にも取り掛かる。さらに、モンテカルロ法の改良について、配置提案と正準アンサンブルの構築の問題を切り分けるアイデアを得たので、その検討を行う。
|