研究課題/領域番号 |
21K14735
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
加藤 敦隆 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究員 (40826161)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 硫化物固体電解質 / 電極電解質界面 / 全固体電池 / 無機高分子 / 電極/電解質界面 |
研究開始時の研究の概要 |
硫化物固体電解質は、高いイオン伝導性に加えて優れた可塑性を有しており、加圧によって広い電極活物質/固体電解質の接触界面を形成することができるため、全固体リチウム電池の内部抵抗を低減することができる。しかし、従来の硫化物固体電解質は、充放電中の体積変化の大きい電極活物質の場合、電極/電解質界面で割れや空隙が発生していた。そこで、本研究では、柔軟な骨格構造をもつ硫化物固体電解質を新たに作製し、強靭な電極/電解質界面の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、柔軟な構造を有するホスファゼン電解質の合成において、原料となる塩化ホスファゼンポリマーの重合条件を検討した。アルゴン雰囲気での開環重合により重合を行ったところ、塩化ホスファゼンポリマーは、加熱温度や時間を増加させていくにつれて、高分子特有の伸びやゴム弾性を示すようになった。それぞれの塩化ホスファゼンポリマーに対して、ボールミルにより硫化リチウムとメカノケミカル反応させることでホスファゼン硫化物を作製した。副生成物の塩化リチウムをTHFによる洗浄により除去した後のホスファゼン硫化物の導電率は、250℃-3時間、250℃-10時間、275℃-10時間のそれぞれの重合条件で、1.3×10-5 S/cm、8.7×10-6 S/cm、1.1×10-6 S/cmとなり、重合が進むほど導電率は低下することがわかった。 250℃-3時間の条件で作製したホスファゼン硫化物を用いて、シリコン負極による電池特性の評価を行った。はじめ、乳鉢混合で作製した電極合剤を用いて評価を行ったが、電解質の凝集体が多く観測され、電池特性にもバラつきが見られた。そこで、溶媒とバインダーを用いた湿式のスラリー塗工でシリコン負極のシートを作製したところ、凝集体を少なくすることができ、初期数サイクルにおいて、約3000 mAh/gの可逆容量を得ることができた。その後、充放電を繰り返していくにつれて容量は減少していき、30サイクル後には初期容量の約75%となった。今後、重合度や導電率を調整したホスファゼン硫化物を用いることで容量低下の抑制ができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ホスファゼンポリマーを出発とした硫化物電解質の合成とシリコン負極を用いた電池特性評価について検討を進めた。重合条件の異なるホスファゼンポリマーをもとに新規な固体電解質を合成することができ、また、実際にシリコン負極を用いた全固体電池において、良好な動作を確認した。一方で、合成したホスファゼンポリマーの構造解析を行いつつ、機械的特性の評価を行う予定であったが、まだ詳細な評価には至っておらず、検討を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、塩化ホスファゼンポリマー原料のホスファゼン硫化物について、本年度に至らなかったNMR等を用いた構造解析および機械的特性の評価を行う。得られた結果を基に、最適な合成条件について検討を行い、シリコン負極を用いて全固体電池の電池特性評価を行う。結果に対して、フィードバックを行いつつ柔軟で化学的安定性の高いホスファゼン骨格の特徴を活かした全固体電池の構築を目指す。
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