研究課題/領域番号 |
21K14764
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
老木 紗予子 京都大学, 農学研究科, 助教 (40843090)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 糸状菌 / 精油 / ファルネソール / ABCトランスポーター / 精油成分 |
研究開始時の研究の概要 |
バラやレモングラスの主要な精油成分であるファルネソールは糸状菌に対して抗菌活性を示す。しかし、その詳細な作用機序や細胞内での動態は不明なままである。本研究では、ヒト病原モデル糸状菌Aspergillus fumigatusにおいて、アゾール系薬剤への耐性に関与することで知られる排出系ABCトランスポーターのCdr1Bに着目し、ファルネソール排出系の分子同定および基質認識機構の解明を目指す。天然の抗菌物質であるファルネソールの作用機序および排出機構を明らかにすることで新規な抗真菌薬の開発に役立つことが期待される。
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研究実績の概要 |
バラやレモングラスの主要な精油成分であるファルネソールは、様々な微生物に対して抗菌作用がある。本研究では、ヒト病原性糸状菌Aspergillus fumigatusにおけるファルネソール排出機構を明らかにすることを目的とする。今年度は、「ファルネソールが細胞内のグルタチオンと抱合してCdr1Bによって排出される」という予測モデルを検証した。酵母状真菌Candida albicansにおいて、ファルネソールによって薬剤排出ABCトランスポーターCDR1の発現が上昇し、細胞内のグルタチオンが減少することが報告されている。また、A. fumigatusにおいて、CDR1ホモログであるCdr1Bの遺伝子破壊株では野生株と比較してファルネソール感受性が高く、ファルネソール処理した菌糸細胞のファルネソール蓄積量が増加することをすでに明らかにした。そこで、A. fumigatusにおけるグルタチオンとファルネソール感受性の関与を調べるため、野生株とcdr1B遺伝子破壊株について、ファルネソールおよび/またはグルタチオンを添加し、細胞内のグルタチオン濃度およびファルネソール感受性を測定した。その結果、野生株とcdr1B遺伝子破壊株のいずれにおいてもファルネソール存在下で細胞内グルタチオン量は減少したが、野生株よりもcdr1B遺伝子破壊株におけるグルタチオン量減少量の方が多く、また、グルタチオンの添加によるファルネソール感受性の緩和は見られなかった。したがって、A. fumigatusにおいてファルネソールとグルタチオンが抱合して排出される可能性は考えられるものの、Cdr1Bによって排出されるのはファルネソールとグルタチオンの抱合体ではないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、グルタチオンを利用したファルネソール排出モデルを検証した。A. fumigatusにおけるグルタチオン量とファルネソール感受性を調べた結果、ファルネソールの排出にグルタチオンが関わってはいるものの、Cdr1Bとグルタチオンは関与しない可能性が考えられた。また、所属先の変更に伴い、A. fumigatusを扱う環境を整えるため、当初の予定になかった安全キャビネットとオートクレーブを購入した。今年度は予定通りモデルの検証ができたため、おおむね順調に進展したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究により、申請当初のグルタチオンを利用したCdr1Bによるファルネソール排出モデルではないことが示唆されたが、Cdr1Bのファルネソール排出への関与には影響がないため、引き続き基質認識機構の解明を目指す。
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