研究課題/領域番号 |
21K14766
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高木 俊幸 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (00814526)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 褐虫藻 / Cladocopium / Durusdinium / カロテノイド生産菌 / ストレス耐性 / サンゴ / ホロビオント / 細菌叢操作 / ゼアキサンチン / FISH解析 / サンゴホロビオント / 共生 / 活性酸素種 |
研究開始時の研究の概要 |
地球温暖化に伴う白化現象により世界中のサンゴ礁が急速に消滅している。有効な予防策は見出されておらず、サンゴ礁保全は今まさに取り組むべき喫緊の環境問題である。申請者らは世界で初めて白化現象の原因物質である活性酸素種の産生を軽減する機能を持つカロテノイド生産菌を発見し、褐虫藻におけるその機能を証明した。本研究では褐虫藻-カロテノイド生産菌を中心にサンゴホロビオントにおける生物間相互作用をマルチオミクス解析により明らかにし、カロテノイド生産菌が褐虫藻のROS産生を軽減する機構を全容解明する。
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研究実績の概要 |
サンゴは主にCladocopium属褐虫藻と共生関係を築いているが、白化からの回復過程においては、Durusdinium属褐虫藻が優占して共生する。これは、「DurusdiniumがCladocopiumよりもストレス耐性が高い」という両者のストレス耐性の違いによる現象と考えられている。そこで、カロテノイド生産菌の感染が両属の褐虫藻ストレス耐性にどのような影響を与えるのかを調査した。昨年度、細菌感染実験を行ったDurusdiniumに加えて、Cladocopiumに対してもカロテノイド生産菌を接種し、約3ヶ月後にカロテノイド生産菌の感染が継続していることを確認した。 次に、無菌褐虫藻及びカロテノイド生産菌が共生した褐虫藻に対して高温ストレス実験を実施した。非ストレス条件では、Cladocopium・Durusdiniumともに、カロテノイド生産菌の共生の有無によって、光合成能力(Fv/Fm)に有意な差は認められなかった。一方で、高温ストレス条件では、Cladocopium・Durusdiniumともに、カロテノイド生産菌が共生している藻体は、有意に光合成能力(Fv/Fm)が高かった。この結果は、カロテノイド生産菌が褐虫藻において保護効果を持つことを示している。特に、カロテノイド生産菌による藻体への保護効果は、Cladocopiumにおいて発揮された。また、本菌については、次世代シーケンサーによるゲノム解析も完了し、完全長ゲノムの解読に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cladocopium・Durusdinium属褐虫藻の細菌叢解析の結果、感染させたカロテノイド生産菌の相対存在比率が100%であったことから、褐虫藻細菌叢の完全な操作に成功していると考えられた。また、Cladocopium・Durusdiniumにおいて、カロテノイド生産菌による藻体保護効果の違いを見出すことができた。また、本菌については、次世代シーケンサーによるゲノム解析も完了し、完全長ゲノムの解読に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに褐虫藻からの単離に成功した細菌は、ゼアキサンチン以外にもカロテノイドを合成していた。今後は、全てのカロテノイド成分の同定を目指す。また、ラマン顕微鏡を用いて細菌が生産するカロテノイドのイメージングや、細菌叢を操作した褐虫藻に対する強光ストレス実験を実施し、細菌による褐虫藻保護メカニズムを詳細に明らかにしていく予定である。
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