研究課題/領域番号 |
21K14794
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
春成 円十朗 富山県立大学, 工学部, 講師 (00750449)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 海洋深層水 / 放線菌 / Rhodococcus / Streptosporangium / 新規pluramycin類縁体 / 希少放線菌 |
研究開始時の研究の概要 |
放線菌は医薬品候補となる物質の生産能力が極めて高い、主に陸土壌に生息する微生物である。陸上の放線菌が生産する物質は精力的に調べられたため、現在では新しい物質を発見することが困難な状況にある。このような背景から、近年では海洋に生息する放線菌が注目されている。海洋には陸上と異なる放線菌が存在しており、ここから臨床試験中の抗がん物質をはじめ、多くの新しい物質が発見された。 本研究では放線菌の研究が進んでいない深層水に焦点を当て、新しい物質を生産している可能性が高い、希少なグループの分離を試みる。また、生産物解析によって陸上・海洋との相違点や医薬品探索源としての有用性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
昨年度と同様に、新型コロナ感染症の影響により、申請当初に計画をしていた全国の海洋深層水取水施設へのサンプリングが困難な状況であった。また、今後も計画通りに遂行できない可能性が考えられた。そのため、当初予定していた研究計画を大きく変更し、製品評価基盤機構(NITE)の微生物保存機関であるバイオテクノロジーセンター(NBRC)で提供されているスクリーニング用微生物(RD株)から、海洋深層水由来の放線菌株を検索した。このうち、特に研究報告例の無い北海道羅臼の海洋深層水から分離された55株について、詳細な生産物の解析を実施することで、新規化合物の探索を行うこととした。 はじめに、前年度に新規化合物が得られ、海洋深層水に存在する放線菌における有用希少放線菌として選定したRhodococcus属から6株、さらには海洋深層水からの分離例が極めて少ない、Streptosporangium属20株を優先的に研究に用いた。これら26株は3種類の化合物生産用培地にて培養・抽出し、主にHPLCを用いた生産物の詳細な解析を行った。解析の結果、大半の株では生産物の量が検出限界であったり、構造解析が困難であると判断された。構造解析に十分な量の化合物を生産していると判断したRhodococcus属の1株、Streptosporangium属の2株について、追加で生産培養を行い、目的化合物を各種クロマトグラフィーにて精製した。NMR、MSスペクトルによる構造解析の結果、Rhodococcus株から1つ、Streptosporangium属から2つの新規化合物を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画からは大きく変更となったが、新規化合物を得ることに成功している。このうちRhodococcusから得られた化合物の構造は、SciFinderで検索しても類似する構造の登録がないことから、天然物としてはもちろん、有機化合物として新規性が極めて高い化合物であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
得られた新規化合物の平面構造に間違いが無いことを確実にして、次に立体化学を明らかにする。立体化学の決定には収量が少ないことから、はじめに非破壊的な比旋光度とECDスペクトルによる決定を試みる。次に計算化学によるECDの算出、結晶化によるX線回析、有機合成的手法を検討する。加えて、新規性の高いRhodococcus由来の化合物は生合成経路にも興味が持たれるため、炭素の同位体標識実験により解析を行う。
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