研究課題
若手研究
塩分の過剰摂取が、心臓病や脳卒中、腎臓病など種々の疾患のリスクファクターになることは周知の事実であり、人生100年時代とも言われる現代において、味覚を正常に保ちながら、食による健康を維持・増進していくことは重要である。しかし、塩味の感知、さらに、味覚障害の発症機序及び病態における詳細な分子メカニズムは不明な点が多い。本研究では、オルガノイド培養や味蕾細胞株を用いた塩味感知経路の解明、さらに、シングルセルトランスクリプトーム解析を用いた味覚障害の発症機序と病態の理解を目指す。
味覚を構成する基本五大味の内、塩味の感知を担う味蕾細胞とその分子メカニズムの詳細は不明な点が多い。本研究では、特定の味蕾細胞に特異的な発現を示すJaw1とIII型イノシトール三リン酸受容体(ITPR3)との相互作用が、GPCR刺激時のカルシウムシグナリングに増強効果をもたらすことを、培養細胞を用いて明らかにした。また、マウス舌から単離した味蕾細胞のカルシウムアッセイにより、Jaw1陽性の味蕾細胞が塩味の感知を担う細胞の1つである可能性が示唆された。一方で、味蕾細胞のシングルセルトランスクリプトーム解析により、Jaw1陽性味蕾細胞に特異的な発現を示す遺伝子も見出した。
本研究において、塩味の感知を担う細胞集団とそのメカニズムの一端を明らかにしたことは、複雑な味覚機能の理解を進める上で学術的貢献度が高く、この理解の更なる深化は塩分の過剰摂取を防ぐための食事方法の提案や味覚障害の治療法の開発等に寄与する可能性があり社会的意義も大きい。また、シングルセルレベルでの網羅的な遺伝子発現解析により得られた知見も元にすると、味蕾細胞集団の分類を従来よりもさらに細分化させた視点も踏まえながら、味覚機能に関する研究を進めることが今後期待される。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件)
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