• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

ガス交換を指標とする水ストレス耐性評価および灌水制御システム構築に向けた基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K14840
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分39020:作物生産科学関連
研究機関広島大学

研究代表者

冨永 淳  広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (20788632)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2022年度)
配分額 *注記
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
キーワード気候変動 / 節水農業 / スマート農業 / フェノミクス / 光合成 / 水分生理 / 水ストレス / 光合成ガス交換 / 灌漑制御
研究開始時の研究の概要

地球温暖化に伴い、作物への安定した水供給を前提とした多収品種の開発だけでなく、干ばつ下の生存率や水利用効率の高い耐乾性品種、あるいは、豪雨や長雨に強い耐湿性品種の開発が望まれる。また、作物の水需要に合わせて灌水を精密に制御することで、作物生産そのものの水利用効率を高める必要がある。本研究では、葉面クチクラ層の水透過性や気孔の漏れが作物の耐乾性や耐湿性を左右するのか明らかにし、これら大気との境界面の特徴が作物育種の新たな指標になるのかを検証する。また、葉内のCO2濃度や湿度と作物の水利用効率・水ストレス状態の関係を明らかにし、植物の水分状態に応じた自動潅水制御システムの構築を目指す。

研究実績の概要

本研究では、植物と大気の境界面である葉のガス交換特性に着目し、作物の水分状態に応じた自動潅水制御システムの構築を目指している。昨年度は、従来法では困難であった気孔を有する葉の「クチクラ層の水透過性」や「気孔の漏れ」を非破壊で評価できる新たな測定法を開発した。
当該年度は、主に1)植物のガス交換やガス交換制御要因を測定する為の新たなガス交換測定方法を開発し、その検証をおこなった。さらに、2)開発した新規ガス交換測定法を用いて、水ストレスを検知できるか検証をおこなった。
上記1)では、標準測定装置LI-6800を用いた既存の測定法と新規測定法によって片面気孔性葉または両面気孔性葉の光合成や蒸散のCO2応答および光応答を同葉面積で同時に評価した。その結果、既存法と新規法による測定値はよく一致していた。また、両面気孔性葉の場合、向軸面と背軸面のどちらでも測定できた。
上記2)では、実験室内で自然光の日変化をシミュレートした条件で、作物に人為的な水ストレスを与えながら、光合成および蒸散を継続的に評価した。その結果、光合成と蒸散日変化の特異的なパターン変化から水ストレスを検知できた。
以上の結果から、新規ガス交換測定法の有用性を明らかにした。既存のガス交換測定法では植物にCO2や空気を供給する必要がある。その為、測定環境を安定させるために装置が複雑で大きくなる。新規ガス交換測定法では、ガス透過膜を介して植物-大気間をガス分子が直接移動するため、CO2や空気の供給を必要としない。また、装置の構成がシンプルなので、作物栽培現場での低コストで継続的なバイタルセンシングへの利用が期待できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の最終目標は、植物の水ストレスを直接感知して灌水を自動で制御できるシステムを構築することである。そこで本研究では、植物の環境刺激に応じてダイナミックに制御されているガス交換に着目し、1)植物の水ストレス状態および水ストレス耐性の指標を明らかにし、2)それら指標を作物栽培現場で簡便に計測、モニタリングする方法を開発することを目的としている。
1)について、本研究ではこれまでに、「クチクラ層の水透過性」や「気孔の漏れ」を非破壊で計測する新たな測定法を開発した。これらは、植物の水ストレス状態や水ストレス耐性の新たな指標となりえる。
2)については、前述の通り、当該年度に大きな進捗があった。従来のガス交換測定システムでは測定法がネックとなり、装置が大型かつ高価で、作物栽培現場でのアプリケーションに不向きであった。開発した新規ガス交換測定法によって、小型で安価な測定システムを実現できると考えられる。新規ガス交換測定法については、2023年1月に特許出願を完了した。
以上のことから、本研究はおおむね順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

上述の通り、植物の水ストレス検知に利用できる新たなガス交換測定法を開発した。今後は、本測定法の応用を目指しながら、おおむねこれまで通りの研究計画を進める。具体的には、1)開発した新規ガス交換測定法による測定システムの構築と2)本測定システムを用いた水ストレス応答および水ストレス耐性の評価方法の開発をおこなう。
1)では、新規ガス交換測定法を応用した測定システムの開発をおこなう。作物栽培現場でのアプリケーションに適した小型かつ安価な測定デバイスを開発し、光合成や蒸散の多点、長期モニタリングを可能にする。
開発した測定システムでモニタリングされる植物の生体情報を灌水制御へとフィードバックする為には、光合成や蒸散の日変化から植物の水ストレス応答を検知する必要がある。また、それらのモニタリングから植物の水ストレス耐性を評価できれば、スクリーニングへと応用できる可能性が拡がる。
そこで、2)では、上記の「クチクラ層の水透過性」や「気孔の漏れ」と水ストレス耐性との関係を、開発した測定システムによる光合成・蒸散モニタリングや、より直接的な既存の水分状態測定との比較等から明らかにする。

報告書

(2件)
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (6件) 産業財産権 (1件)

  • [国際共同研究] University of New Mexico(米国)

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [国際共同研究] University of New Mexico(米国)

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 作物のバイタルセンシングに適した新規ガス交換測定法の開発2023

    • 著者名/発表者名
      冨永淳
    • 学会等名
      日本作物学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 気孔がある葉面でのクチクラコンダクタンス推定2022

    • 著者名/発表者名
      冨永淳,Joseph Stinziano,David Hanson
    • 学会等名
      第63回日本植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] ハイスループット光合成活性測定装置の開発2022

    • 著者名/発表者名
      岩坂凪紗,冨永淳,佐藤綾人,木下俊則,坂本敦,島田裕士
    • 学会等名
      第63回日本植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 葉内CO2濃度の直接測定:気孔面のクチクラコンダクタンス測定法の開発2022

    • 著者名/発表者名
      冨永淳,川満芳信,Joseph Stinziano,David Hanson
    • 学会等名
      日本作物学会第253回講演会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 光阻害がCYO1/CYO2高発現イネの光合成および生長に与える影響の解析2022

    • 著者名/発表者名
      冨永淳
    • 学会等名
      令和3年度 岡山大学資源植物科学研究所 共同研究成果発表会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 葉内CO2濃度の直接測定 気孔面のクチクラコンダクタンス推定への応用2021

    • 著者名/発表者名
      冨永淳,川満芳信,Joseph Stinziano,David Hanson
    • 学会等名
      日本生物環境工学会 オンライン次世代研究発表会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [産業財産権] 生体情報測定器及び生体情報の測定方法2023

    • 発明者名
      冨永淳
    • 権利者名
      冨永淳
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2023-013278
    • 出願年月日
      2023
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2021-04-28   更新日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi