研究課題/領域番号 |
21K14879
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
|
研究機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 |
研究代表者 |
綱本 良啓 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 研究主任 (00884355)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | エゾシカ / ヒグマ / GPS追跡 / 北海道 / 消化管通過時間 / 種子散布距離 / 種子散布 / ニホンジカ / ハマナス / 牧草 / ウワミズザクラ / サルナシ / ヤマブドウ |
研究開始時の研究の概要 |
大型動物による種子散布は、大量の種子を遠くまで運ぶことができるため、生態系に大きな影響を与える可能性がある。しかし、温帯や亜寒帯域における大型動物の種子散布機能は、熱帯地域と比較すると、あまり研究されてこなかった。そこで、この地域に分布する大型哺乳類エゾヒグマとエゾシカを対象として、1)散布種子の組成解明、2)飼育個体を用いた採餌試験による消化管通過時間の測定、3)排泄種子の播種試験による発芽率の測定、4)GPSによる野生個体追跡データを用いた散布距離と散布環境の解析、に取り組む。それにより、採食から発芽までの散布過程全体を評価し、温帯・亜寒帯域における大型動物の種子散布機能を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
昨年度と同様の手法で、エゾシカの採餌試験を追加実施した。合計5回(2022年2回、2022年3回)の結果から、液果樹木の種子破壊率および消化管通過時間を推定した。その結果、健全種子の回収率は、植物やシカ個体により異なったが最大でも半分程度であった(ヤマブドウ1.5-55.0%、サルナシ0.8-29.4%、ハマナス0.0-6.8%)。消化管通過時間は、ヤマブドウ23-121時間、サルナシ23-145時間、ハマナス23-101時間であった。破壊されずに排出された種子は、現在発芽試験を実施中である。さらに、既存の野外個体のGPS追跡データを利用することで、種子散布距離の推定を行った。GPS追跡データは、北海道白糠丘陵で捕獲した16頭の9-12月に関するものを利用した。GPS追跡個体の行動パターンは、個体や季節により大きく異なることが確認された。そのため、個体ごとに定住期と越冬地への移動期にデータを分けて解析を行った。定住期の種子散布距離は、ヤマブドウで平均573 m、最大8,670 m、サルナシで平均614 m、最大9,834 mであった。一方で、越冬地への移動期の散布距離は顕著に長く、ヤマブドウで平均2,915 m、最大18,496 m、サルナシ平均3,770 m、最大18,341 mであった。以上より、エゾシカは、多くの種子を消化過程で破壊してしまうが、長距離散布者として貢献していると考えられた。これらの研究成果について、日本生態学会にて口頭発表を行った。 また、ヒグマの種子散布機能については、昨年度までに実施した採餌試験や発芽試験の成果を取りまとめ、論文として公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エゾシカについては、昨年度に試行回数が不足していた採餌試験を追加実施することで、消化管通過時間、種子破壊率、散布距離などを推定することができた。ヒグマについては、昨年度までの研究成果を取りまとめ論文として公表した。以上のことより、エゾシカとヒグマの種子散布機能を評価するという本研究も目的は、おおむね達成できたと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
エゾシカ排泄種子の発芽試験を継続し、発芽率を推定する。エゾシカの種子散布機能についての研究成果についての論文を執筆する。
|