研究課題/領域番号 |
21K14901
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
竹内 久登 愛媛大学, 南予水産研究センター, 特定研究員 (80802157)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 養殖 / 魚病 / 感染症対策 / マダイ / エドワジエラ症 / 非侵襲検査 / RNA |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,養殖場における環境水をサンプルとした,非侵襲的な魚病検査手法の確立を目指す。魚病細菌に感染させたマダイ飼育水中に放出されるマダイ由来の生体物質 (水中生体物質) の正体を,遺伝子およびタンパク質の網羅的解析により特定するとともに、特定された水中生体物質の免疫学的および分子生物学的手法による定量法を確立する。さらに,魚体の感染状態変化と水中生体物質動態の関係性,および確立された手法の魚病発生の予測性を検証することで,検査マーカーとしての水中生体物質の適用性を評価する。
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研究実績の概要 |
昨今、養殖場では様々な魚病が頻発し、生産効率や商品価値を著しく低下させている。魚病被害抑制のためには、密な検査により魚病発生を早期に探知し、発生拡大の前に封じ込め・治療を行うことが不可欠であるが、現行の検査方法は取り上げや解剖による魚体へのダメージから養殖業者に敬遠されている。そこで本研究では環境水をサンプルとした、魚体の取り上げを必要としない非侵襲的な魚病検査手法を確立することを目的とする。 昨年度、マダイに対する魚病細菌Edwardsiella anguillarumの感染試験を行い、飼育水中のマダイ由来RNAの網羅的検出を行ったところ、複数のRNAが非感染魚飼育水に比べ有意に増加していた。また、これらのうち3つのRNAを選定し定量PCR法による定量検出系を確立し、飼育水中の当該RNAの発現動態を調べたところ、対象としたいずれのRNAも感染魚飼育水中で非感染魚飼育水に比べ数十~数百倍高く発現しており、またRNAの種類により発現パターンが異なっていた。そこで本年度は、再度マダイに対するE.anguillarumの感染試験を行い、確立した飼育水中のRNA定量系について再現性・妥当性を確認したところ、確立した3つのRNAはいずれも昨年度と同様の発現動態を示し、再現性が確認された。また、これらのRNAは実際の養殖場の飼育水からも検出可能であったことから、これらが病原体の感染を探知できる非侵襲性マーカーとして魚病検査に応用できる可能性が示唆された。さらに、選定されたRNAの一部については、市販の検査キットを用いた関連タンパク質の飼育水中の活性測定系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度見出され、定量検出系が確立されたマダイ飼育水中のRNAついて、昨年度と同様の条件で得られた感染試験の飼育水サンプルを対象として3種のRNAの測定を行ったところ、いずれのRNAも昨年度と同様の発現動態を示し、再現性が確認された。また、計画では複数の水温環境下での感染試験によりRNAの検出精度を検証する予定であったが、飼育設備の問題から実施が困難となったため、異なる時期 (夏季・冬季) におけるマダイ養殖場の環境水を予備的に採取し、RNAの検出を試みたところ、いずれの時期おいてもRNAの定量検出が可能であった。これらのことから、選定した3種のRNAを2023年度より開始する養殖場での実地調査におけるマーカーとして決定した。 一方、飼育水中タンパク質の網羅的検出を目的としたプロテオーム解析については、飼育水中タンパクの安定した精製が困難であったため、見出されたRNAに関連するタンパク質について市販のキットを用いて飼育水を用いた活性測定系を確立した。しかしながら、これらのキットは高価であり、RNA検出に比べ検出感度が低かったことから、養殖場での実地調査ではRNA検出系のみを用いることとした。 以上のように、当初の計画通り養殖場での実地調査に用いる飼育水中マーカーの選定を完了したため、進捗状況を「おおむね順調に進捗している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
マダイ養殖場における実地調査を行い、定期的に環境水を採水し、選定したマーカーRNAの発現解析を行う。得られた発現データは養殖場における環境データ (水温, 塩分等) や魚病の発生状況と比較し、魚病発生に対するマーカーRNAの応答性を解明する。
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