研究課題/領域番号 |
21K14922
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分41010:食料農業経済関連
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
原田 英美 福島大学, 食農学類, 准教授 (10815492)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 農業経営 / 顧客との信頼構築 / 原子力災害 / 危機対応 / 顧客との信頼関係 / 経営再生 |
研究開始時の研究の概要 |
2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故で、福島県では放射性物質対策を取りながら営農活動を継続できた地域でも、価格下落や販売不振などの経済的実害に見舞われた。しかし、取引を失いながらも新たに販路を開拓してきた農業経営の中には、消費者や実需者と信頼関係を築きながら継続的・安定的な取引を拡大し、経営を震災以前よりも発展させてきたケースが見受けられる。そこで、本研究では、原子力災害により取引停止などの損害を受けた福島県の農業経営のうち、顧客である消費者や実需者と深く結びつきながら再生を果たしてきた事例を対象に、原子力災害下での経営展開の過程や顧客との信頼関係構築の過程を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、原子力災害により被災した農業経営のうち、取引先を失いながら新たな顧客と深く結びついて経営再建を果たした農業経営の事例を対象に、経営展開の過程や顧客との信頼関係構築の過程を明らかにするものである。原子力災害による被災は、経営の新たな方向への舵取りにも顧客との関係構築にも大きく影響している。本研究では、第1に、原子力災害という危機への対応行動を把握し、その意思決定の過程を理解する。第2に、震災後に継続的な取引先となった顧客(スーパー、メーカー、リピーターの消費者など)との信頼関係構築のプロセスを理解する。顧客との関係という視点から福島県産農産物に対する風評払拭に新たな道筋を見出そうという狙いである。 初年度の2021年度は、顧客との関係に着目したマーケティング分野の文献を中心に、経営戦略やイノベーション関連の文献などを収集し、事例調査の分析視角となる理論や知識を整理した。また、事例調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行により、一部の県内事例しか調査できなかった。2年目の2022年度は、関係性マーケティングやコミュニティマーケティングについて理解を深め、顧客との相互作用的な価値創出に関連する概念について整理し、さらに風評関連の文献にあたる計画であったが、十分に進められなかった。このため、2021年度にできなかった農業経営の調査とその顧客に対する調査に向けて、新たな分析視角が整理しきれなかったため、事例調査に着手できなかった。調査予定の事例に関する情報収集などは行ったものの、調査の準備に時間がかかり、昨年度の遅れに加え、さらに進捗が遅れている状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、主に①文献に基づく理論・知見の収集と分析視角の構築、②分析視角に基づく事例調査、の2つから成る。2021年度は、①に関しては主にマーケティング分野の文献収集から始め、分析視角を明確にしてから6事例に対して調査を実施する計画であった。 しかし、昨年度の遅れに加え、文献の選定・収集・内容の整理などに予想以上に時間がかかっているうえ、本研究に充てる時間を十分に確保できなかった。このため、既に実施した予備調査を踏まえたうえで、新たな分析視角をもって、震災後の経営対応の意思決定過程と顧客との信頼関係の構築過程を調査する計画であったが、事例調査のための分析枠組みが構築できず、事例は選定したものの調査に着手できなかった。これは、新型コロナウイルス感染症の流行による移動や長時間の対面インタビューに対する制約も一因であるが、それよりもエフォート管理に失敗したことが大きい。2023年度は、本研究のためにしっかりと時間を割き、遅れをとり戻していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究の枠組み自体はそのままで、計画を後ろにずらしながら遅れをとり戻して研究を前進させる。そのために、本研究のための時間をしっかりと確保する。 まずは、調査の準備を完成させることが第一で、これまでの成果を基に、新たに手を広げ過ぎないようにして、なるべく早い段階で分析枠組みを固めて調査が実施できるようにする。新型コロナウイルス感染症がひとまず落ち着いたため、調査方法も予定通りの時間をかけた対面での半構造化インタビューを予定しているが、状況次第では昨年度も検討していようにオンラインの活用も視野に入れたい。計画段階では、3年目の2023年度は成果のとりまとめの段階となっているため、なるべく早く調査を実施し、成果のとりまとめにまでつなげたい。具体的には、以下のとおり進める。 第1に、実施できなかった農業経営事例に対しての調査を行う。半構造化インタビューにより、実際の経営行動だけでなく、経営判断に至った経営者の考え方を聞き取り、経営展開や顧客との関係構築のプロセスを理解する。第2に、原子力災害による風評問題に関する先行研究の知見を踏まえて、顧客に対する調査設計を行う。この際、風評の払拭に有効と思われる要素が何かについて仮説を導き出すことを意図し、福島県農産物の風評払拭や風評被害を受けない農業経営のあり方を考える材料となる回答を得られるようにする。第3に、農業経営6事例の主要な顧客に対する調査を実施する。第4に、調査結果に基づき、生産者と実需者・消費者の信頼関係構築のプロセスを明らかにする。 これらの研究成果は、学会での報告や論文執筆のほか、調査対象の農業経営者らを集めた報告会などで紹介し、現場に成果を還元すると同時に当事者の立場からの意見を寄せてもらう計画であるが、これは予定より遅れる可能性がある。
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