研究課題/領域番号 |
21K14941
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分41030:地域環境工学および農村計画学関連
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研究機関 | 茨城大学 (2023) 山口大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
坂口 敦 茨城大学, 農学部, 講師 (50747558)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 水ストレス / CWSI / 土壌水分 / ドローン / 熱画像 / 気孔コンダクタンス / 葉温 / リモートセンシング / 葉温推定手法 / 省力的水ストレス観測 / CWSI推定 / Jarvisモデル / HYDRUS / ダイズ |
研究開始時の研究の概要 |
灌漑排水や土壌改良などの圃場整備は作物収量を増加させるために行われる。事業の効果は作物収量を指標として評価する事が多いが、土壌水分を指標とすれば栽培期間全体に渡る経時的な観測が可能となる。しかし、土壌水分のみでは作物生育への効果を評価する事ができないため、本研究では作物の水ストレス指標を定めた上で土壌水分の過不足とダイズの水ストレス指数の関係を定式化し、更に圃場整備後の土壌水分を数値予測する事で、栽培期間中における作物の水ストレスの経時変化予測値を指標とした圃場整備計画の策定に資する。
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研究実績の概要 |
2021年に気孔コンダクタンスの比を観測して求めたCWSIと根域土壌の吸引圧の相関はR2=0.77であったが、2022年にドローンで圃場の作物群落上層の葉温を観測して求めたCWSIと根域土壌の吸引圧の相関はR2=0.36であった。この決定係数の低さの原因を検討したところ、空撮した熱画像の温度分布の歪度が吸引圧の増加と共に負へ向かう現象を確認した。この現象は作物群落内の個葉間の水ストレスの不均一性が増大する事によって生じているものと仮定し、今年度はオーストラリア国の農業試験場において、作物群落内から日射を受けている葉をランダムに選んで気孔コンダクタンスを観測した。その結果、同一時刻内に計測したデータの変動係数が吸引圧の増加と共に上昇する事を確認した。以上から、作物群落の平均葉温には土壌の乾燥と共に乾燥下でも高い蒸散速度を維持できている葉の葉温から蒸散が停止した葉の葉温までが混在し始め、平均葉温が群落の水ストレス状態を反映しにくくなるとの仮説に至った。現在、気孔コンダクタンスの計測と同時に撮影した株単位の葉温分布を集計し、気孔コンダクタンスと同じく土壌が乾く程に単位株内での葉温分布の変動係数が上昇していたかを確認中である。 上記から、ドローンで空撮した熱画像を用いてCWSIを求めている研究者は少なからず居るものの、そのCWSIから圃場の土壌の乾燥程度を把握する事は土壌が乾燥する程に困難になると考え、今後の研究の推進方策欄に記した新たな圃場の乾燥程度観測の試行を年度内に開始した。また、上記を学会のシンポジウムにて発表した際に圃場ではなくグロースチャンバー内でも詳細に再観測すべきとのコメントを頂き、再観測および個葉間の水ストレスの不均一性の増大がCWSIに与える影響の評価を年度内に開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
圃場の乾燥程度の観測方法の確立は当初の研究計画の一部分にすぎないが、観測方法部分だけについて考えると進捗している。しかし、観測方法に関して問題点を見つけ、その問題点への対処方法の模索に注力しており、その完了後でないと以降の研究計画の実施に進めないため、当初の研究計画全体の遂行について考えると遅れていると判断できる。上記の問題点についても、海外の諸研究者らも同じ方法を用いて観測活動を行っており、一般的な観測方法の問題点を見つけたと考えると、問題が生じて躓いているというネガティブな評価と新たな発見をしたというポジティブな評価の双方ができる。当初計画を全うする事を重視すべきか、研究の進捗に応じて当初計画を変更する事を良しとするかで評価が異なると思われる。 予算執行に関しては、日本の異常気象により確実に乾燥条件下の圃場で観測を行えるオーストラリアで観測活動を実施したために、予定外の旅費が発生して当初計画とは異なる執行状況となってしまった。しかし、オーストラリアで観測を行ったがゆえに上記の問題点を見つける事ができたため、予定外の出費で予算が尽きてしまったものの費用対効果の高い出費であった。
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今後の研究の推進方策 |
圃場の乾燥程度の観測方法の確立は当初の研究計画の一部分にすぎないが、その完了後でないと以降の研究計画の実施に進めないため、本研究によって明らかとなったドローンで圃場の乾燥程度を観測する際の問題点の克服に次年度も注力する予定である。 日本の異常気象によりオーストラリアで観測活動を実施したため、当初は予定していなかった旅費が発生して科研費は尽きたが、他の予算を得て温湿度プローブHMP155と純放射計NR-LITE2を調達し、ドローンで空撮した圃場の熱画像から熱収支により圃場の乾燥程度の把握に努めている。熱収支で日蒸発散量を求める際のドローンの飛行頻度および飛行時刻、作物群落内部温度と空撮温度の差異、地表面の乾燥に伴う地表面と地中蒸発面の地温の差異が課題であるが、求まった実蒸発散量とポテンシャル蒸発散量の比によりCWSIを示せば、乾燥条件下でも灌漑管理等に実用可能な精度で圃場の乾燥程度を把握できるものと期待できる。
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