研究課題/領域番号 |
21K15005
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分42040:実験動物学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤原 靖浩 東京大学, 定量生命科学研究所, 助教 (50793064)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 減数分裂 / R-loop |
研究開始時の研究の概要 |
R-loopは、解離した2本鎖DNAと新生RNAからなる3本鎖核酸構造であり、新たなエピジェネティック調節機構として注目を集めている。R-loop構造は不安定な構造でDNA損傷の原因となり得る為、SETXやRNaseHといった因子によって解消される。SETX欠損マウスの精子形成は、第一減数分裂前期パキテン期で停止する一方で、SETX欠損雌マウスは、妊性を維持している。しかし、卵形成過程におけるR-loopの役割は全く解明されていない。本研究は、独自に保有・樹立を目指す複数のモデルマウスを用いて、SETXとR-loopが持つ雌雄配偶子形成における役割と、その制御機構の解明を試みる。
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研究実績の概要 |
本研究の主要目的の一つであるSETXの相互作用因子を探索するために、SETXをコードするSetx遺伝子のC末端にFLAGタグ及びHAタグを導入したノックイン(KI)マウス作成をゲノム編集技術を用いて試みた。挿入鋳型配列をもつssODNを複数用意し3度試みたが、完全な挿入配列をもつ個体を得ることが出来なかった。得られら不完全挿入配列を持つマウスの中から1bp欠損配列をもつKIマウスマウスと新たな鋳型配列ssODNを用いて配列の修正を試みたが、完全な配列をもつ個体を得ることは出来なかった。そこで、KIマウスの作出の代わりに、SETXに対する抗体を用いてSETX相互作用因子の同定を試みることとした。SETXのC末端を標的とするポリクローナル抗体を作成し、抗体の特異性を確認するために、WT細胞及びSetx欠損細胞を用いた免疫染色、SETX抗体を用いたCUT&Tagシーケンス及びChIP-seqを行った。その結果、SETX抗体は細胞内SETXを検出することができ、ChIP法にも利用可能であることが明らかとなった。また、CUT&Tagシーケンス及びChIP-seqの結果から、SETXはパキテン期精母細胞においてこの時期の転写において重要な機能を持つMYBL1をコードする遺伝子であるMybl1を含む数多くの遺伝子群のプロモーター領域に局在することが明らかとなり、SETXが直接標的とする遺伝子群を同定することに成功した。本年度は、SetxKO雄マウスの詳細な表現型解析、Setxによる減数分裂期の転写制御機構における解析、異なる発生段階の雄性生殖細胞を詳細に分画する手法開発、の三つの研究内容に関して研究代表者を筆頭著者として原著論文の執筆を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SETX-KIマウスの作成に多くの時間が割かれたにもかかわらず、結果として目的のKIマウスを得ることが出来なかったため、当初予定していた研究を順調に進めることが出来なかった。タグ配列を持つKIマウスの他に当初計画していたヘリカーゼドメインに1アミノ酸変異を持つKIマウス作成にもまだ取り掛かれていない。一方で、SetxKO雌マウスの解析進めるにあたって比較対象となるSetxKO雄マウスの解析及び論文執筆は順調に進んでいる。当初計画していた実験内容は大きく変更する必要があり、本研究の進行そのものはやや遅れていると言わざるを得ないが、生殖細胞におけるSETXの機能解明をいう大きな移転から考えると十分な成果は得られていると考えられる。今後は、当初計画していたSETX相互作用因子同定を目的として、異なるアプローチから研究を進めていく予定である。さらにアミノ酸置換KIマウスの作成も進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、SETX相互作用因子の同定とアミノ酸置換KIマウスの作成を継続して行っていくものとする。SETX相互作用因子には、特異性の確認ができたポリクローナル抗体と雄性生殖細胞を用いて免疫沈降(ChIP)法および質量分析を行う予定である。SETXが解消するR-loopの局在解析も並行して行っていく。R-loopは転写を行っている細胞ではかならず形成されるものである。雄細胞の分画法はすでに確立したが、雌性生殖細胞の単離方法を確立する必要がある。細胞内DNA量による分離、またはレポーター遺伝子によるGFP発現マウスなどの導入を行い、雌性生殖細胞におけるR-loop形成領域の同定を進めていく。さらに、現在執筆中の論文3報の科学雑誌への投稿を行う予定である。
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