上皮細胞傷害性を有する腸内細菌による大腸がん発生機序の解明

• 研究課題/領域番号: 21K15008
• 研究種目: 若手研究
• 配分区分: 基金
• 審査区分: 小区分42040:実験動物学関連
• 研究機関: 山口大学 (2022); 大阪大学 (2021)
• 研究代表者: 辻 竣也 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (80898370)
• 研究期間 (年度): 2021-04-01 – 2023-03-31
• 研究課題ステータス: 完了 (2022年度)
• 配分額: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円); 2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円); 2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
• キーワード: SARS-CoV-2 / 細胞老化 / SASP / 腸内細菌 / 腸内細菌叢 / COVID-19 / 大腸がん / 腸管バリア機構 / Long-COVID

研究開始時の研究の概要

大腸がんは、日本において罹患者数1位、死亡者数2位のがんであり、病態解明や新たな治療法の開発が求められている疾患である。近年、大腸がんの発生には、腸内細菌叢の変化が深く関与していることが明らかになってきたが、その発がん誘導機構は不明な点が多い。申請者は、これまでの研究から、早期大腸がん患者で増加している細菌のうち5種が、ヒト正常上皮細胞に細胞傷害性を有し、大腸がん発生初期に生じる腸管バリア機構の破綻に関与する可能性を見出した。そこで、本研究では、これらの細菌が有する上皮細胞傷害機構の解明を通し、大腸がんの予防法や治療法開発への応用を目指す。

研究成果の概要

本研究では、新型コロナウイルス感染症における腸内細菌叢の乱れと、大腸癌発症の関連を明らかにすることを目的として開始したが、実際にマウス等の実験動物の腸内細菌の異常は検出できなかった。しかしながら、本研究の過程で、新型コロナウイルスが感染する主要な臓器である肺において、細胞老化と呼ばれる現象が引き起こされ、ウイルスが体内から排除された後も持続する炎症反応の原因の１つとなっていることを明らかにした。このような現象は、現在世界的に問題となっているLong COVIDと呼ばれる、COVID-19から回復した後も続く後遺症の病態の一端となっている可能性が考えられる。

研究成果の学術的意義や社会的意義

新型コロナウイルス感染症（COVID-19）は2019年12月に発生した新興感染症であり、回復した人の10%程度で後遺症が残り、1年以上もその症状が持続してしまうことが問題となっているが、依然としてその原因は明らかになっていない。本研究ではSARS-CoV-2感染により誘導される老化細胞がその原因となっている可能性を明らかにすることができた点で大きな社会的な意義があると考えている。

研究成果

• [雑誌論文] SARS-CoV-2 infection triggers paracrine senescence and leads to a sustained senescence-associated inflammatory response (2022)
  • 著者名/発表者名: Tsuji Shunya、Minami Shohei、Hashimoto Rina、Konishi Yusuke、Suzuki Tatsuya、Kondo Tamae、Sasai Miwa、Torii Shiho、Ono Chikako、Shichinohe Shintaro、Sato Shintaro、et al.
  • 雑誌名: Nature Aging 巻: 2 号: 2 ページ: 115-124
  • DOI: 10.1038/s43587-022-00170-7
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] SARS-CoV-2 infection triggers paracrine senescence and leads to a sustained senescence- associated inflammatory response (2022)
  • 著者名/発表者名: Shunya Tsuji, Shohie Minami, Rina Hashimoto, Tatsuya Suzuki, Miwa Sasai, Shiho Torii, Chikako Ono, Shintaro Shichinohe, Shintaro Sato, Masahiro Yamamoto, Tokiko Watanabe, Yoshiharu Matsuura, Kazuo Takayama, Takeshi Kobayashi, Toru Okamoto, Eiji Hara
  • 学会等名: 第20回あわじ感染と免疫国際フォーラム
  • 国際学会
• [備考] 新型コロナウイルスの感染は細胞老化を引き起こすことで炎症反応が持続することを発見
  • URL: http://www.biken.osaka-u.ac.jp/achievement/research/2022/167