研究課題/領域番号 |
21K15087
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
鳥山 真奈美 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (30773121)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 一次繊毛 / シグナル伝達 / 神経炎症 / ノックインマウス / 質量分析法 / コンディショナルノックアウト |
研究開始時の研究の概要 |
アストロサイトは脳内で最も多いグリア細胞であり、神経を支持する役割を持つと長らく考えられてきた。しかし近年、炎症に応じて神経死を誘導する脳内免疫担当細胞として、アストロサイトの亜群であるA1アストロサイトが同定された。この細胞群の増加がアルツハイマー病などの神経変性疾患の発症に寄与する可能性が示唆されている。しかしその分化制御メカニズム、特に分化抑制機構は不明である。本研究ではアストロサイトの一次繊毛シグナルに着目し、A1アストロサイトの一次繊毛に発現・局在する受容体を網羅的に同定し、これらの機能解析を通じて、A1アストロサイトの分化制御機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
当該年度は、一次繊毛特異的にGFP-APEXを発現するノックイン(KI)の樹立に成功し、本マウスを用いて初代アストロサイトにおける一次繊毛構成分子の同定を試みた。しかし、本KIマウスにおけるGFP-APEXの発現量が想定よりも低く、ホモの遺伝子型をもつマウスは胎生致死を示すこと、ヘテロの遺伝子型を示すマウス由来の細胞においては、ウエスタンブロットではGFP-APEXタンパク質の発現は確認できるものの、免疫染色法では検出限界以下のため一次繊毛特異的なGFPの蛍光が検出できなかった。本マウス由来細胞を用いた一次繊毛特異的なタンパク質発現解析はさらなる条件の確立が必須であると考えられたため、平行して一次繊毛を時期・組織特異的にノックアウトすることのできるコンディショナルノックアウト(cKO)マウス(IFT88 cKOマウス)を樹立し、表現型の解析を行った。野生型マウス由来グリア細胞をLPSで刺激するとA1アストロサイトの分化が促進される。一方、IFT88 cKOマウス由来グリア細胞をLPSで刺激しても、A1アストロサイトの分化は誘導されず、一次繊毛の形成がA1アストロサイトの分化に必要であることが示された。また、野生型マウスにLPSを腹腔投与すると、脳内におけるA1アストロサイトの数が増加し、マウス新規物体認識テストのスコアは未投与群に比べて有意に減少する。一方、IFT88 cKOマウスにLPSを腹腔投与しても、脳内A1アストロサイトの数は増加せず、新規物体認識テストのスコアも減少しなかった。この結果より、LPS投与による認知機能の低下は一次繊毛を介したA1アストロサイト分化誘導により生じることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の予定に一部変更(4年目に計画していた研究を当該年度に遂行)は生じたものの、全体の研究進捗状況はおおむね順調であるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き作製したAPEXノックインマウスを活用し、一次繊毛に局在しているタンパク質の同定を試みる。一方で、LPSを腹腔投与した疑似炎症モデルマウスを用いた単細胞トランスクリプトームが報告された(Nat Neurosci 24, 1475-1487 (2021)。公開データの解析により、我々は炎症誘導したアストロサイトにおいて特異的に発現上昇する一次繊毛局在GPCRの候補を絞り込んだ。今後はこの候補GPCRの機能解析を行うことで、当初研究計画2年目に予定していた実験を来年度以降推進する予定である。
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