研究課題/領域番号 |
21K15106
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
小野 廣記 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (40867602)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | オナガナメクジウオ / 種間比較 / トランスクリプトーム / 遺伝子発現解析 / フロリダナメクジウオ / 種間交雑 / ナメクジウオ / 形態形成 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は幼生形態の異なる2種のナメクジウオの交雑実験をもとに、ハイブリッド幼生の発生過程において2種の遺伝子制御機構が併存するのか、一方が優先されるのか、あるいは互いに干渉するのかなど、詳細な遺伝子制御機構の解明を目的とする。これまでハイブリッドを用いた発生学的研究では、複雑な表現型や発現する遺伝子が由来する種の判別など解決すべき課題が多かった。しかし、体制が単純で、ゲノム情報や発生に関する知見が豊富なナメクジウオは、ハイブリッド形成における発生プログラムの調節や可塑性の詳細な仕組みを明らかに出来ると期待される。
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研究実績の概要 |
オナガナメクジウオ成体のサンプリングを沖縄県八重山郡竹富町黒島沿岸域において実施し、水深3~4メートルの砂礫地におけるドレッジにより成体を13匹得ることができた。生体のサンプリングには黒島研究所の協力を得た。そのうち2個体よりtotalRNAを抽出した(MN NucleoSpin RNAを使用)。 TotalRNAはシーケンス外注にて次世代シーケンサー(Illumina NovaSeq6000)ライブラリー調整したサンプルの塩基配列を取得した。取得したシーケンスの結果はクオリティコントロール(fastp,Trimmomatic)にてアダプター配列の除去やクオリティの低いリードの除去後、Trinityにてアセンブルを行った。アセンブル結果の評価はBUSCOにて行い、metazoa core gene setの保有率はそれぞれ96.3%、98.0%となり、シーケンスの精度は十分高いと評価できる。 フロリダナメクジウオゲノムに対するマッピングでは、初年度に行われたマッピングテスト同様にマッピング率は非常に低かった(サンプルそれぞれ1.6%, 2.0%)。マッピング率はリードのクオリティやアダプター配列の残存に大きく影響されることから、テストに用いたRNA-seqデータと今回のサンプルのRNA-seqデータのクオリティの差がマッピング率の差として現れることが懸念されていたものの、むしろクオリティの高いリードほどフロリダナメクジウオのゲノムにマップされないリードとして検出された。そのため、フロリダナメクジウオのゲノムを利用して雑種個体内で発現する2種のナメクジウオの遺伝子の区別を行うことは十分に可能であることが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に行った解析インフラを整備したため、成体のオナガナメクジウオのRNA-seqデータを得た後はスムーズにマッピングやアセンブルを行うことができた。しかし、人工的な日長・月周期をコントロールすることで産卵誘起を図ったものの、産卵に至らなかったため胚を得ることはできなかった。加えて、フロリダナメクジウオの寿命によりラボ内での飼育系が絶えてしまったことから当たらな生体サンプルを得る必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
生殖巣の発達や成体の採集記録より、野外でのオナガナメクジウオの産卵は初夏から夏季に行われる事が考えられる。そのため、6月に沖縄県八重山郡竹富町黒島にて繁殖を控えた成体のオナガナメクジウオを採集し、飼育して自然産卵を促し、胚を得ることを計画している。 また、フロリダナメクジウオに関してはカリフォルニア大学サンディエゴ校スクリプス海洋学研究所から得ることを計画している。 加えて、ナメクジウオは原始的な体制を持つ脊索動物であり、他の動物特に脊椎動物と収斂的に閉鎖血管系や複雑な体制を獲得した頭足類の進化を考える上でも発生比較に使いやすいことが考えられる。そのため、ナメクジウオ以外にも遺伝子発現解析に用いる種を設けて遺伝子発現プロファイルの比較を行う。
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