研究課題/領域番号 |
21K15113
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
劉 孟佳 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (50826922)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 内皮細胞性造血 / 組織リモデリング / 組織マクロファージ / Nkx2-5 / Notchシグナル / レチノイン酸シグナル / シングルセルRNAシーケンス / 内皮造血 / 組織定住マクロファージ / 大血管リモデリング / 心血管発生 |
研究開始時の研究の概要 |
哺乳類の大血管系は、胎生中期には大動脈嚢・咽頭弓動脈・背側大動脈から成る左右対称な構造をしているが、やがて一部が存続・形態改変し、一部が退縮・消失する。このような大血管系の劇的な構造変化を伴う形態形成機構は全く不明である。申請者らは大動脈嚢・咽頭弓動脈における造血内皮細胞がマクロファージ産生能を持つことを発見したことから、大血管リモデリング過程に出現するアポトーシス細胞除去に重要であると考えた。局所にて産生され機能するマクロファージの存在・意義・重要性を明らかにすることを目標とし、先天性心疾患の1/3を占める咽頭弓動脈異常の新たな病態の解明に繋がる発生学的研究を行う。
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研究実績の概要 |
胎生期において心臓を構成する多くの細胞は、同一の起源を持つのみならず互いの分化成熟を促すことで形態形成を完成させる。造血細胞はただ血管内を循環するだけでなく、心血管系の形態形成において重要な役割を持つ。当グループは、胚発生期の一時期に心臓の心内膜細胞も造血能を持ち、組織リモデリングに重要なマクロファージ産生の部位となることを明らかにしてきた。この造血性心内膜細胞はマウス胎生9.5日前後に心内膜床に集中してみられ、ホメオボックス転写因子Nkx2-5により特異的に制御されていることが明らかとなった。Nkx2-5転写因子が胎生期の心内膜床部分の内皮細胞に発現し、局所造血に必須であるが、その詳細な分子メカニズムは未解明であった。 本研究では、Nkx2-5依存的な心内膜造血の制御機構を探るため、Nkx2-5ノックアウト(KO)マウス胎仔(胎生9.5日)の心臓を用いたsingle-cell RNA sequence (scRNA-seq)データを解析した。scRNA-seq解析から、Nkx2-5null心内膜ではNotchシグナル伝達経路に関連する遺伝子の発現が有意に減少していることが明らかとなった。さらに詳細なシグナルネットワーク解析の結果、レチノイン酸(RA)シグナルを減衰させる還元酵素であるDhrs3がNkx2-5下流で造血性心内膜細胞を特徴づける遺伝子となっていることを同定した。In vivoおよびex vivoの解析から、Nkx2-5-Notch axisは造血性心内膜および心内膜床細胞の生成に必須であり、Dhrs3発現によるRAシグナルの抑制はマクロファージへのさらなる分化に重要な役割を果たすことが検証された。以上のことから、Nkx2-5/Notch/RAシグナルが造血性心内膜細胞からのマクロファージ分化に極めて重要な役割を担っていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標の一つである心内膜造血の分子制御メカニズムを解明し、2023年9月にNature Communications誌に発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
心内膜造血機構を明らかにした内容の論文発表に加え、同様の機構が大血管にも存在するか否かを検証した。Nkx2-5系譜を持ったマクロファージは心臓流出路近くの大血管(上行大動脈)平滑筋付近に存在していたことから、心内膜で生成されたマクロファージが遊走した可能性があると考えた。そこで、心内膜細胞から造血が起こる様子、また造血が起きた後にマクロファージに分化して組織に定住する様子マウス胚のライブイメージングで捉える試みに挑戦する。
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